DeNA今永昇太が豪州で捨てたフォームの迷い、手に入れた新たな感覚と視点

インタビューに応じたDeNA・今永昇太【写真:佐藤直子】
インタビューに応じたDeNA・今永昇太【写真:佐藤直子】

3年目の昨季は大苦戦「すごく恥ずかしい経験」

 2018年を振り返る時、DeNA今永昇太は「すごく恥ずかしい経験」と話す。その理由は「1軍で使ってくれた恩を結果で返せなかった」からだ。3年目の昨季は、23試合に登板し(16先発)、4勝11敗4ホールド、防御率は6.80だった。1年目(8勝9敗、防御率2.93)、2年目(11勝7敗、防御率2.98)に続く結果は残せなかった。

「この世界は結果を出さないと職を失う。自分がどれだけ何をやったかじゃなくて、ファンの方とか首脳陣は結果を評価するわけですから。監督にもあれだけ登板数をもらいながら、チームを勝たせられなかった。投手コーチにもいろんな言葉を掛けてもらい、いろんな練習に付き合ってもらったのに、なかなか結果を出せなかった。チームメートにもたくさん気を遣わせてしまったし、チームの歯車をうまく回せなかった。自分が足を引っ張ったことが、昨シーズンの4位という結果に直結してしまった。その責任はすごく感じています」

 プロに入ってからの2年、「頭と体がうまく連動し始めて」、思い描くイメージ、投げている感覚、実際に投げるボールが一致し始めた。心の中に芽生えた「これだったらいけるかも」というかすかな思いが、シーズン中の変化に対する恐れとなり「いろんなものを守ってしまった」。25歳左腕は「自分が任されている仕事に対する気持ちの弱さとか甘さが、まだまだある。もっと覚悟しなくちゃいけないし、それくらいやってくれるだろうと思われていると思います」と自分に手厳しい。

 今永と言えば、1年目からルーキーらしからぬ冷静な言動で、自己に厳しい真面目な探究者のイメージがある。だが、実は「ちょっとイメージが一人歩きしている感じで、僕の本位ではないんです。確かに、文字にしてしまうと『何か言ってるな、コイツ』みたいな感じはしますよね」と苦笑い。「自分ではそんな意識はないんですけど、結構頑固だって言われることもあるんで、そういうところも含めて柔軟に変えていきたい。もっと野球に対して一喜一憂したり、面白い楽しい悔しいっていう感情を表に出してもいいんじゃないかと思います」と話す。

 イメージだけではなく、マウンドに上がった時もまた「シンプルかつ柔軟にありたい」と言う。昨シーズンを振り返った時、「バッターと勝負する前に、自分の頭の中で自分と勝負してしまっていた」ことも多く、ピンチに立たされると「キャッチャーミットしか見えなくなって体が前に突っ込んだ結果、打たれてしまう」こともあった。マウンドからホームまでの18.44メートルという空間を力まずに捉える。これを試せたのが、今オフに参加したオーストラリアでのウインターリーグだった。

 昨年DeNAはオーストラリアン・ベースボールリーグ(ABL)のキャンベラ・キャバルリーと戦略的パートナーシップを締結。「1年目からウインターリーグは興味があった」という今永は、オフの派遣を志願し、赤道を越えた。三上朋也、国吉佑樹、青柳昴樹と4人で飛び込んだABL。もちろん、コミュニケーションは英語で、かつ日本のように上げ膳据え膳というわけにはいかない。そんな中でも、滞在中には6試合に先発し、4勝0敗、防御率0.51という圧倒的な成績を残した。

「マウンドの硬さもまちまちで、ボールの大きさも一定ではない。縫い目が歪んでいるボールがあったり、思うような準備ができないこともありましたけど、自分の神経質な部分を取り除くという意味では、すごくいい経験ができたと思います。些細なことは気にせずに、純粋に野球をやる。こういう考え方や見方もあるんだって感じました」

「フォームで迷わなかったということが一番の収穫」

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