日南市、沖縄市…どこでも熱い声援が飛ぶ人気球団・広島の春季キャンプ

広島・緒方監督【写真:荒川祐史】
広島・緒方監督【写真:荒川祐史】

今や全国的な人気を誇る広島、キャンプ地での人気はとりわけ高い

 1950年にセントラル・リーグに加入した広島カープは、親会社を持たない市民球団としてスタートした。創立年の1950年から広島県総合球場でキャンプを張る。1954年にはのちに野球殿堂入りする政治家の松本瀧蔵を団長として1月からフィリピン遠征にも出かけている。

 しかし、この年を除いて広島県総合球場、呉市二河球場など広島県内でキャンプをすることが多かった。市民球団で親会社がない広島は、常に資金難に苦しんでいて、十分な練習環境を整えることができなかった。1962年に宮崎県日南市に日南市天福球場ができると、翌63年から広島はこの地を春季キャンプ地とする。2軍が呉市二河球場を使った時期もあるが、広島は58シーズンにわたって日南で春季キャンプを張り続けている。

 60年代に入っても、広島は資金潤沢とは言えなかったが、日南市民は温かく広島ナインを迎え入れた。今では日南市は広島カープの「第二のホームタウン」になった。

 日南市天福球場は、JR日南線油津駅から歩いていける距離にある。2018年には、油津駅が真っ赤にペインティングされた。また商店街も赤に染まり、球場までの通路はレッドカーペットのように赤く塗装されている。また、この時期の日南観光協会の職員の中にはカープのユニフォーム姿で勤務をする人もいる。

 半世紀以上が経って、球場は老朽化している。またキャンプ地そのものも巨人やソフトバンクに比べれば、手狭ではあるが、市民のカープ愛は熱い。キャンプ期間中は、広島県からも多くのファンが訪れる。球場前には朝早くからファンが並び、球場入りする選手に熱い視線を注いでいる。

 また2009年から2軍は東光寺野球場で春季キャンプを行っている。最寄り駅は、1軍キャンプの行われているJR油津駅の隣の日南駅であり、車で15分程度の日南総合運動公園内にある。昨年は新井貴浩が若手に交じって調整を行っていた。

 1983年から広島は沖縄県沖縄市で2次キャンプを行うようになった。こちらは1軍だけが行うキャンプ。練習試合やオープン戦が主体だ。球場は2014年に大改修され、ネーミングライツでコザしんきんスタジアムとなった。

 この時期になると、沖縄市内には「ちばりよー(がんばれ)! 広島」と書かれた真っ赤なバナーがあちこちで見られる。市民の関心も高く、沖縄市も日南市に続き「第3のホームタウン」になった感がある。2017年は優勝パレードも行われた。

 1軍が沖縄県に移動すると、日南市天福野球場には、東光寺球場から2軍が移動してくる。こういう形で日南市では2月中は、広島の選手の練習風景を見ることができる。

 広島カープの人気は今や全国的だが、キャンプ地での人気はとりわけ大きい。選手たちは熱い声援の中で調整に励んでいる。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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