親会社800億円赤字予想も「影響ない」 西武オーナーが全面支援する球団の存在意義

改修された本拠地メットライフドーム【写真:宮脇広久】
改修された本拠地メットライフドーム【写真:宮脇広久】

過去数度の危機も「球団に勇気、元気をもらって成長してきた」

 西武の後藤高志球団オーナーは8日、“オール西武”でのチーム支援を約束した。親会社の西武ホールディングス(HD)はコロナ禍による観光需要の低迷を受け、今年3月期の最終赤字が過去最大の800億円に上る見通し。それでもHD社長でもある後藤オーナーは「影響はありません。西武グループの総力を結集してライオンズをしっかりとサポートしていく」と断言した。【宮脇広久】

 後藤オーナーはこの日、3年間に渡った本拠地メットライフドーム改修の竣工式に参列。会見で、親会社の業績悪化の球団経営への影響を問われると、開口一番「ありません!」と語気を強めた。

「ライオンズは西武グループのシンボルであって、過去にはいろいろ厳しい時代もあったが、その都度、埼玉西武ライオンズに勇気、元気をもらって、グループ全体が成長してきた」と説明。「今回も(球団の保有によって)好循環が生まれていくと思う」と語った。

 実際、西武は2004年の球界再編に際しては、他球団との合併を模索。2008年にはリーマン・ショックに見舞われ、2013年には当時西武HDの筆頭株主だった米投資ファンドの「サーベラス」(その後全株式を売却し、撤退)から球団売却の検討を要求されたが、全て乗り切ってきた。

 そして、昨春からの新型コロナウイルスの感染拡大。西武HDは2月25日、2021年3月期の連結純損益が過去最大の800億円の赤字となる見通しを発表。鉄道やホテル、ゴルフ場の利用客が大幅に減少していることなどが背景にある。

 メットライフドームの改修も、2017年12月から3年余りをかけて総額約180億円を投じたが、工事がスタートした時点でコロナ禍はもちろん想定できなかった。収容人数は3万1552人となったが、観客動員は当面、上限5000人に抑えられる。逆風にさらされてのリニューアル・スタートとなる。

 それでも球団は昨年、メットライフドームの大型ビジョンと、系列のホテルに宿泊するファンをリモートで繋ぐ新サービスを行うなど、対策に着手。後藤オーナーは「なるべく早くコロナが収束し、満員の観客の前で選手にプレーしてもらいたい」としつつ、「当面はリアルとデジタルを高いレベルで融合させることに努めていきたい」と語る。未曾有の危機を、新たなファン層開拓というチャンスに変えていく。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY