リクエスト制度は「なくなってほしい」 元審判員が求める野球の醍醐味

パ・リーグで約30年審判員を務めた山崎夏生氏【写真:編集部】
パ・リーグで約30年審判員を務めた山崎夏生氏【写真:編集部】

機械に頼るならばもっと設備をしっかりしないといけない

 リクエストができて、表面上では審判は誰も傷つかないです。間違いであっても結果的にリプレーで覆れば、もう誰もそのジャッジを覚えていないでしょうね。こんな野球、面白くないとファンも言えばいいんです。リクエスト制度なんて、ファンに拒否してもらいたいんですよ。中断も多いし、ゲームの終盤、そんなプレーにリクエスト使うのかよというダメ元リクエストってやつも好きじゃない。権利が残っているからただ使うだけで、試合の流れが止まってしまう。ただ、リクエストについては、現場からは、正確なジャッジをしてもらうから、ありがたいという声はあっても、否定的な意見は出てこないと思います。

 機械の弱点だってあります。NPBでは各球場にテレビ局の中継画像があるだけ。それも2つか3つしかない。韓国やアメリカは大きなモニターで鮮明、スーパースロー再生もできる。アメリカの「チャレンジ」は、12?20台くらいの専用カメラを設置してニューヨークに検証センターを作って、審判も増やしました。現場の審判ではなく第三者に任せる。もしも日本だったら、同じクルーの審判が当該の審判に言うことになりますが、これは若い審判は先輩のジャッジについて、言いづらいと思います。

 人間が判断するから、機転を利かせて、想定して、瞬時に動くことできる。経験から一番見えるところに立つこともできる。しまったという顔をしているとか本当に痛がっているとか、そういう隠しきれない選手の表情も情報のうち。音だってある。機械は読み取ることができません。機械に頼るならばもっと設備をしっかりしないといけないと思います。

(山崎夏生 / Natsuo Yamazaki)
1955年7月2日、新潟県上越市生まれ。64歳。新潟・高田高、北海道大学で主に投手として硬式野球部でプレー。1979年に新聞社に入社も野球現場への夢を諦められずプロ野球審判員を目指す。1982年にパ・リーグ審判員に採用され、2010年まで審判員として活躍。その後はNPBの審判技術指導員として後進の育成。2018年に退職。現在はフリーで活動し、講演やアマチュアの審判員として現役復帰し、野球の魅力を伝えている。

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