父は新型コロナの闘い最前線 元DeNA右腕が医師を目指して猛勉強中「早く力になりたい」

医師を目指す元DeNAの寺田光輝さん【写真:本人提供】
医師を目指す元DeNAの寺田光輝さん【写真:本人提供】

昨年DeNAから戦力外通告、2月から大手予備校で生活費を稼ぎながら猛勉強中

 元DeNAの寺田光輝さんが新型コロナウイルス感染者を救う医師になると誓った。昨年10月にDeNAから戦力外通告を受けて現役引退を決断。医師への転身を志し、現在は大学医学部の編入試験受験を目指して猛勉強中だ。新型コロナウイルスが感染拡大し、医療崩壊の危機が指摘されているとあって、「医師になりたい気持ちは強くなっています。本当に全国で医者の数が足りてないのは分かりましたし……。今自分にできることはないんですけど、早く力になりたいです」と闘志を燃やした。

 未知のウイルスの脅威を肌で感じている。父・晃さんは三重・伊勢市の「寺田クリニック」を開業。診療科目は内科・胃腸内科で、連日、新型コロナウイルスとの闘いの最前線で奮闘している。「病院内は常にピリピリしています。本当に誰が感染しているのかも分からない状況なので……。父はマスクを二重にして完全防備で対応していますが、疲弊しているように見えます」。

 伊勢高から三重大に進むも休学。一度は三重大の医学部を志したが、「野球を続けたい」と筑波大へ進んだ。ルートインBCリーグ石川から17年ドラフト6位でDeNA入り。腰の故障で1軍登板こそならなかったが、両親は「勉強しろ、医者になれと言われたことは小さい頃から1度もない」と好きな野球を思う存分やらせてくれた。「恩返しと言ったらおこがましいですが、少しでも家や地元の力になりたいです。新型コロナウイルスが収束しても、この先、他のウイルスが出てくるかもしれない。何か力になりたいんです」。2月から大手予備校「河合塾マナビス」で生活費を稼ぎながら猛勉強している。

 もちろん大学医学部の受験で一発合格できる保証はない。「大学編入試験は生命科学と英語の2教科。高校時代は得意な印象があったんですけど、思っていたよりも難しいですね。でも、野球と違って試験には必ず正解がある。自分が必死になればいいだけなので頑張れます」。11年ワールドシリーズを制したカージナルスの一員で医師に転身したマーク・ハミルトンさんが新型コロナウイルスに立ち向かうという海外ニュースも見た。「メジャーリーガーでお医者さん。僕の希望でしかないし、不可能ではないんだなと証明してくださった。本当に嬉しい記事でした」。夢の実現へ励みとする。

 今永、齋藤、進藤、楽天へ移籍した熊原ら元チームメートと連絡を取り、井納からは「勉強しろ」とゲキを飛ばされているという。同じルートインBCリーグでプレーしたDeNAのラミレス監督からは「あなたはハングリー精神を持っている。この先も大丈夫だよ」と背中を押された。「ラミレス監督は独立リーグの現状を知っている方。頑張ろうと思いました。憧れの場所だったプロ野球では何をしても結果が出ませんでしたが、とにかくベストを尽くして頑張っていこうと思っています」。医師としてウイルスとの闘いに挑む――。大きな使命感を胸に前へ前へと進んでいく。

 ◆寺田光輝(てらだ・こうき)1992年1月5日生まれ、三重・伊勢市出身、28歳。伊勢高から三重大に進むも退学。2年の浪人を経て筑波大へ進学した。地元・百五銀行の内定を得たが、卒業後の15年にルートインBCリーグ・石川に入団。17年ドラフト6位でDeNA入りした。昨季2軍では18試合登板、1勝0敗、防御率9.86。2年間で1軍登板はなかった。175センチ、76キロ。右投右打。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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