打者の視界から消え去るスプリット お股ニキが選ぶメジャーの名手4人とは…

カブス・ダルビッシュ有【写真:AP】
カブス・ダルビッシュ有【写真:AP】

打者の視界から一瞬で消える… まさに魔球のスプリット

【お股ニキが選ぶ3+1・MLB編 第5回 スプリット】

 待望のMLB2020シーズンが23日(日本時間24日)、開幕を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける今季は、シーズン60試合という異例づくめの中で行われる。イレギュラーなシーズンとなるが、変わらないこともある。それが、1球1球繰り広げられる投手と打者の真剣勝負だ。

 手に汗握る対決にスパイスを効かせるのが、投手が披露する「魔球」だ。打者をきりきり舞いさせる魔球の中から毎回1つの球種にフォーカスを当ててお届けするのが、「お股ニキが選ぶ3+1・MLB編」シリーズだ。野球の新たな視点を提案する謎の解説者・お股ニキ氏が、魔球の使い手「トップ3」と要チェックの「プラス1」を加えた4投手を独断と偏見で選び、ご紹介する。

 今回は、メジャーでは日本人投手の代名詞ともなっている変化球「スプリット」だ。ドジャースなどで活躍した野茂英雄氏からエンゼルスの大谷翔平投手に至るまで、海を渡った日本人投手の多くが「スプリット」を決め球としてきた。4シームのような軌道を描きながら、突如として打者の視界から消え去るように落ちる変化球は、まさに魔球。さて、現在のメジャーでお股ニキ氏が選んだ4人の「スプリット」の使い手は一体誰なのだろう?
(データソースはBaseball Savant、FanGraphs、BrooksBaseballによる。主なデータ項目の説明は最後に付記)

【1位】ダルビッシュ有(カブス)右投
回転効率50.9% 平均球速88.5マイル(約142.4キロ) Spin Axis 1:30 1437回転 
空振り率18.5% 投球割合3.79% 被打率.083 ピッチバリュー/100:2.12

 カッターやスライダー、カーブでトップにダルビッシュがノミネートされるのであれば、読者にもすんなりと受け入れられるだろうが、スプリットの1位がダルビッシュとなると面食らう方も多いかもしれない。本来、日本人最高のスプリットの担い手である田中将大(ヤンキース)が、昨年はスプリットの調子が悪かった一方で、ダルビッシュはスプリットを多投するようになった。

 それというのも、ダルビッシュが投げるスプリットは、かのロジャー・クレメンスにも匹敵するものだから使うようにとアドバイスを受けていたようだ。アドバイスを送ったのは、カブスのマイク・ボーゼロ捕手コーチ。史上最多7度のサイ・ヤング賞を受賞したクレメンスがヤンキース在籍時の同僚で、最も得意とするスプリットを間近で見てきた人物でもある。

 かくいう筆者も、ダルビッシュと初めて交流を持ち始めた頃から、縦に変化するスプリットかチェンジアップを投げることを勧めてきた。昨季はチェンジアップが良くなってきたため、スプリットを封印するのかと感じることがあった。そこで、スプリットの素晴らしさを改めて強調し、使い続けてくれるよう伝えたこともあった。昨季後半の圧倒的なピッチングは、このスプリットによる影響が間違いなく大きい。

 NPB時代の終盤は「簡単に抑えられるからつまらない」とスプリットを封印していた右腕だが、メジャー移籍後も多投することはなく、対左打者の対応で少し手間取る回数が増えた。2018年に日本ハムの後輩である大谷翔平がエンゼルスに移籍し、前半戦だけではあるがスプリットを武器にド派手な活躍を見せると、ダルビッシュも触発されたのか多く使うようになっていった。2018年はピッチングの状態そのものが悪かったので「スプリットも使ってみよう」という気持ちが芽生えたのかもしれない。

 2019年は、左打者に対するスプリットが時々甘く入って痛打されるケースが散見されたものの、ジャイロ回転で鋭く落下するボールで多くの三振を奪い、後半戦はメジャートップ3に入る快投のカギを握っていた。同時にシーズン最後には、よりシュート回転しながら落下する高速チェンジアップのようなボールまでマスターしてしまった。

 スプリットやチェンジアップの感触がいいからか、最近ではツーシームとスプリットの中間のような性質を持つ「スプリーム」まで新たに開発し、習得したようだ。変化の仕方がスラットと左右対になる、これらボールがどれほどの威力を持つかにも注目していきたい。

 しかし、変化球の天才は一体どこまで進化してしまうのだろうか。

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