「全国唯一の春の大学野球」 東京六大学が9日間の“真夏の春”を成立させた意義

「華の早慶戦」で早大・早川隆久は学生のいない応援席を背に力投した【写真:編集部】
「華の早慶戦」で早大・早川隆久は学生のいない応援席を背に力投した【写真:編集部】

全国26連盟で唯一の開催、早大・小宮山監督「全国の連盟に秋へのメッセージになった」

 全国唯一の春の大学野球リーグ戦が18日に幕を閉じた。当初の予定から4か月遅れで行われた東京六大学春季リーグ戦。「春季」とは言うものの、開催は8月、炎天下の戦いとなった。開催方式も大幅に変更。2戦先勝の総当たり制から1試合総当たり制へ。10日から8日間(雷雨ノーゲームで実施は9日間に)で各校が5試合を戦う短期決戦に変わり、東京六大学の華である応援団も不在。観衆は上限3000人に制限され、各校の応援歌が響く華やかな雰囲気は様変わりした。

 多い年には3万人以上動員する早慶戦が唯一、上限いっぱいの観衆3000人。しかし、「完全」と言えない形であっても、リーグ戦を成立させたことに意義がある。春のリーグ戦を開催したのは、全国の大学野球26連盟で東京六大学が唯一だったからだ。

 未曾有の感染症が拡大した4月以降、多くのスポーツと同じように各地の連盟が次々に春のリーグ戦の中止を発表。各連盟の優勝校が出場する春の日本一決定戦、全日本大学選手権も開催を断念した。ただ、東京六大学は中止という判断をせず、開催を求めて可能性を探った。一度は5~6月にかけての実施を目指したが、緊急事態宣言下にあり、さらに延期。最後は開催方式を大幅に変更してでも、8月の“真夏の春”にこぎつけた。

 9日間で15試合延べ3万100人が観戦した熱戦。この日、トリとなる試合を戦った早大・小宮山悟監督は言う。

「我々の連盟には天皇杯があり、これを下賜されていることで各校ともアマチュアスポーツ、大学野球の代表のつもりで戦わなければならない。3月の理事会で世の中が大変なことに状況になりそうだとなっても、なんとか開催できる方法を見つけて頑張ろうと、6校の思いは一緒だった。その中で無事に開催し、今日閉幕した。全国の大学野球連盟に対してなんとかやれた、秋に向けてみんなで頑張りましょうというメッセージになったと思う」

 プロ野球より長く、100年近い歴史を持つ東京六大学。野球において天皇杯が下賜された権威ある連盟は、大学野球界を牽引する存在だった。だからこそ、その東京六大学が諦めてしまえば、他の25連盟が秋に開催を目指すことも難しくなる。その意味で無事に開催し、モデルケースを作った価値は大きい。何より選手たちが「野球をできる喜びを感じた」と口を揃え、グラウンド上で好ゲームを連日展開したことが喜ばしいことだった。

 もちろん、選手もファンも安全を守る仕組みは徹底した。入場者はすべてサーモグラフィー、非接触による検温を実施。観戦にはマスクを着用し、客席も2メートル(最低1メートル)離れて着席するよう呼びかけた。アルコール類の販売も行わず、大声を出しての声援も自粛を求めた。報道陣も同様に検温を実施。試合後は監督と指名選手1人のみが出席し、マスク着用で会見する方式を取るなど、そこかしこに対策のあとが見られた。

他の大学野球連盟関係者が視察「一部監督からは『秋へ向けてありがたかった』と…」

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