オリ田嶋は「日本を代表する投手になる」 OBが指摘する課題と鷹・和田毅の凄みとは?

オリックス・田嶋大樹(左)とソフトバンク・和田毅【写真:福谷佑介、荒川祐史】
オリックス・田嶋大樹(左)とソフトバンク・和田毅【写真:福谷佑介、荒川祐史】

田嶋には「自分を信じて投げ切ってほしい」

■オリックス 3-3 ソフトバンク(2日・京セラドーム)

 2日に京セラドームで行われたオリックスとソフトバンクの一戦は熱戦となり、延長10回の末3-3で引き分けた。3年目・24歳のオリックス田嶋大樹投手と、日米通算139勝を誇る39歳のソフトバンク和田毅投手による左腕の投げ合いは見応え十分だった。ダイエー、ソフトバンクで13年間コーチを務め、その後オリックスでは監督を務めた森脇浩司氏が両者の投球と、2人の間にある“差”について解説した。

 お互いに立ち上がりは不安定だった。田嶋はいきなり川島に先頭打者本塁打を被弾。和田もその裏、2死二塁から吉田正に左前適時打され同点に追いつかれた。

 しかし、その後は対照的なスタイルで投手戦を演じた。田嶋は伸びのあるストレート、切れのあるスライダー、チェンジアップなどを駆使してソフトバンク打線を圧倒。5回1死一、二塁のピンチでは4番中村晃のバットを内角高めのシュートでへし折り投ゴロ。続く松田宣を真ん中低めの140キロ速球で空振り三振に仕留めた。

 一方の和田はひょうひょうとオリックス打線を手玉に取り、2-6回を5イニング連続で3者凡退に抑えた。結局、和田は7回途中に下半身のアクシデントで降板することとなったが、6回0/3、4安打6奪三振無四死球1失点の快投だった。田嶋は1-1の同点で迎えた7回、グラシアルに2ランを浴び、7回7安打6奪三振5四死球3失点。今季成績は和田が4勝1敗、防御率3.13。田嶋は白星には恵まれず1勝3敗だが、防御率はリーグ3位の3.10となっている。

「田嶋はストレート、変化球ともに素晴らしい。粘る力も持ち合わせている。今、経験していることの全てをエネルギーにし、必ず日本を代表する投手に必ずなるだろう。エースの山本由伸同様、末恐ろしい投手だ」と森脇氏は言う。その上で「更なる成長に必要なものは、球種を増やすことやスピードを上げることではなく、その日の自分を冷静に分析し、自分を信じて投げ切ることだと思う」と注文をつけた。

 たとえば、4回2死二、三塁のピンチで、8番の高谷にカウント3-1から四球を与えた。5球中スライダーが3球、カットボールとカーブが1球ずつで、ストレートは1球もなかった。森脇氏は「この日の田嶋のストレートは、ほとんどまともに捉えられていなかった。前回の対戦(8月26日)で高谷にストレートをホームランされた(2点リードの4回に同点2ランを被弾)のが頭をよぎったのかもしれないが、少々コントロールミスをしても大事には至らなかったはずのこの日のストレートを使わない手はなかった」と指摘する。結局、続く川瀬を空振り三振に仕留め、失点することはなかったが、余計な球数を費やしたともとれる。

 また、7回にグラシアルに浴びた2ランも、カウント3-1からカーブで見逃しストライクを1つ取った直後、真ん中低めのフォークを左翼席へ運ばれたもの。森脇氏は「カーブを見送られた後のストレートは使いづらかったのかもしれないが、半速球を打たれたのは残念。この日の田嶋なら防げた」とみている。

 一方の和田は、球威では若い田嶋に及ばないが、相手にジャストミートを許さなかった。ホークスのコーチ時代から和田をよく知る森脇氏は「(和田)毅は繊細なイメージが強いが、実は精密機械のような制球力というわけではなく、逆球も多い。それでも、球の出どころが見づらい投球フォームをつくり上げ、豊富な経験から、打者を打ち取る引き出しが非常に多い。正に熟練の技だ。根底にある心身の強さにも、目を見張らされる。田嶋にとって、毅の投球は勉強になる所が非常に多かったはずだ」と指摘する。

 さらに「毅は入団時から常にストイックに自分と向き合ってきた。向上心の塊のような男だから、この日も逆に若い田嶋の投球から吸収する部分があっただろう。ベンチから田嶋を見つめる毅の表情から、それが読み取れた」とも語った。

 ベテランの域に達して、絶えず向上心を失わない和田と、豊かな素質の持ち主で今後どこまで伸びていくかわからない田嶋。2人が火花を散らす投げ合いを、これから何度も見てみたいものだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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