「背中を押された選手は多い」 智弁和歌山・中谷監督が語る“イチロー氏”への感謝

智弁和歌山・中谷仁監督【写真:荒川祐史】
智弁和歌山・中谷仁監督【写真:荒川祐史】

19年ぶりの決勝進出を決め「ここまで来たら、勝ちと負けでは全く違う」

 第103回全国高校野球選手権は28日、阪神甲子園球場で準決勝が行われ、第1試合では智弁和歌山(和歌山)が近江(滋賀)を5-1で破った。中谷仁監督は主将を務めた1997年夏に全国制覇を果たしており、過去14人いる「選手・監督で優勝」の快挙へあと1勝と迫った。

 2-1と1点リードした6回、2死一塁で宮坂厚希(3年)が外角低めのフォークにしぶとくバットを合わせ中前打で繋ぐと、続く大仲勝海(3年)は外角高めの141キロ速球に逆らわず、三塁線を抜く2点二塁打で、大きく試合の流れを引き寄せた。中谷監督は「宮坂も大仲も、難しいボールにうまく対応してくれた」と称えた。

 8回には、先頭の大西が右前打で出塁すると、宮坂のバントは内野安打に。無死一、二塁から大仲がバントで送って、1死二、三塁とすると、途中出場の須川光大(3年)への初球が暴投となり、貴重な追加点が転がり込んだ。

 中谷監督はこの試合で、送りバントを1死の場面を含めて6度も命じた。うち2回は失敗したが、「得点圏に走者が行けば、相手バッテリーにプレッシャーがかかる。連打連打が難しい時にも、つないで1点を取れるように、バントもきっちり練習してきた」とうなずいた。

 中谷監督は高校卒業後、ドラフト1位で捕手として阪神に入団し、楽天、巨人でもプレー。引退後は恩師で史上最多の甲子園通算68勝を誇る高嶋仁前監督(現名誉監督)の勇退をうけて、2018年に監督に就任した。「全てにおいてしんどい。結果が出なければ叩かれますから。元プロだからとか、僕が批判しかされないのは覚悟の上です。でも、なるべくスマホは見ないようにしています」と苦笑交じりに明かした。

 昨年12月、2019年3月に現役を引退したイチロー氏が智弁和歌山のグラウンドを訪れ、3日間にわたって指導を受けたことは全国的な話題となった。イチロー氏は最後に「ずっと見ているから、ちゃんとやってよ!」という言葉を残した。中谷監督は「あの一言のお陰で、苦しい時や誰にも見られていない時に、背中を押されて努力した選手は多いと思う。本当にありがたい」と感謝する。

 中谷監督は選手時代、3年生の夏の全国制覇だけでなく、2年生の春の選抜で、決勝に進出しながら鹿児島実(鹿児島)に敗れる経験もした。「ここまで来たら、勝ちと負けでは全く違う。僕自身それを経験している」と強調。多彩で豊富な経験を持つ指揮官は、手塩にかけた選手たちと一緒に決勝を勝ち抜く決意だ。

(Full-Count編集部)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY