なぜ入団直後に怪我する? 新人たちが直面する「プロの壁」乗り越えるには

日本ハムの新人合同自主トレの様子【写真:荒川祐史】
日本ハムの新人合同自主トレの様子【写真:荒川祐史】

昨季“2冠”を獲得した右腕もプロ1年目は「自分がやれること以上のことを…」

 NPB12球団では、ルーキーたちがプロ生活をスタートさせている。新人合同自主トレから2月の春季キャンプ、オープン戦へと移っていく中で、必ず出てくるのが故障離脱者。担当スカウトや首脳陣は「焦るな」と口すっぱく言うのに、なぜ怪我をしてしまうのか――。その一因には、アマチュアとは異質な“プロの壁”がある。

 スタートダッシュで大きくつまずくと、挽回には時間がかかる。キャンプで離脱し、開幕は2軍。シーズンに入っても状態が上がらず、焦って再び怪我する新人は少なくない。兎にも角にも、無理は禁物。プロ野球史上唯一の50歳登板を果たしたレジェンド左腕・山本昌氏は引退後、キャンプを視察した際に「3日で治る怪我も、下手すると3年かかるぞ」とルーキーたちに説いていた。

 ただ、それでも“いつも通り”にいかないのがプロの世界。報道陣やファンから一気に注目を浴び、特にドラフト1位選手となれば一挙手一投足がニュースになる。自らも知らず知らずのうちに、背伸びしてしまうことがあるという。

「自分がやれること以上のことをやろうとしていました」。昨季に最優秀防御率と最多奪三振の“2冠”に輝いた中日・柳裕也投手も、プロ入り直後に苦しんだひとり。キャンプ中に右肘の不安を抱えながらも「ブルペンに入ると目立たなきゃって思って、体が万全じゃなくても無理していた部分があった」。オープン戦で背中を故障し離脱した影響もあり、1年目はわずか1勝横浜高、明大と名門を歩んできた右腕ですら、周囲から注がれる視線は異質に感じた。

 一方で、純粋に強度の違いに体が悲鳴を上げるケースもある。新人合同自主トレまでは体をならす程度だが、2月1日を迎えた瞬間にヨーイドン。突如として練習量は増し、日が暮れてからも個別メニューを課すチームも。十分に準備ができていなかった新人は面食らって脱落していく。

 求められるのは、自己管理の術と、環境に惑わされない平常心。さらに周囲のサポートも欠かせない。今年の日本ハム新人合同自主トレ初日では、ドラフト1位右腕の達孝太投手(天理高)が柔軟運動を優先してキャッチボールに“遅刻”。ブレない姿勢は好例のひとつで、新庄剛志監督も「芯を持ってやっていましたね」と驚きの声を上げた。

 実力だけでなく、環境面がもたらす「プロの壁」。今年のルーキーたちは、上手く打ち破ることができるだろうか。

(Full-Count編集部)

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