鷹の2年目・田上奏大が見つけた課題と収穫 1軍ローテを担うために足りないもの

ソフトバンク・田上奏大【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・田上奏大【写真:藤浦一都】

10日に行われた2軍戦で先発し、自己最多の85球を投げた

 10日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの広島戦で先発し、5回6安打4失点で敗戦投手になったソフトバンクの田上奏大投手。初回にいきなり宇草に二塁打を浴びると、野間に四球を与え、林の適時打で先制点を献上。2回も安部の二塁打から木下に適時打を許し、4回には木下に2点本塁打を浴びた。4失点での降板となったものの、自己最多となる85球を投げてまた投手としての段階をひとつ上げた。

 きっちりと“テーマ”を掲げてのマウンドだった。この日、求めたのは「球数」と「イニング数」。1軍、2軍を通じて、試合ではまだ70球前後しか投げた経験のない右腕が、初めて80球を超えた。「今年で1番多く投げたんですけど、やっぱり最後の方になってきたら、球質も落ちてきたなというのはあります」と田上は振り返る。

 この日の投球を見た小久保裕紀2軍監督は「本人の中で70球ぐらいになると球が落ちてくるっていうのが分かっているんで、ちょっと抑えて入ったのかな」とペース配分をしていたと指摘する。田上自身もその意識が「若干あったかもしれないです。余計なことを考えたなというのはあります」と難しさを感じていたようだ。

 中6日での先発登板も田上にとって初めてのこと。「今、ローテーションで回っているピッチャーに比べたら体力も技術も全然足りていないと思うので、もっと上げていかないといけない」と田上。今季はキャンプから投げる体力を身につけることを1つの課題として取り組んできたが、1軍で先発ローテ入りし、シーズンを通して投げ続けるためには更なるレベルアップの必要性を痛感していた。小久保2軍監督が「出力が上がった状態で投げるのが彼の良さ」と話すように、持ち味の力強さを失わずに投げ続けられる体力面も、これからの課題だ。

 4月12日のロッテ戦で1軍初登板初先発を果たし、6回途中無失点と好投。2度目の先発となった同23日の日本ハム戦では2回途中2失点でKOされた。1軍での経験を経て、細かい制球力や追い込んでからの決め球の精度を上げる必要性を痛感。この日は、走者を出しても併殺を狙って、変化球を低めに投げる意識を強く持った。4回からボール球が先行したものの、序盤は初球のストライク率も高く「早めに追い込めたのはよかった点」と収穫もあった。

 まだ投手歴は浅く、故障のリスクなども考慮されて、慎重に“育成”が進められている。一時は1軍に帯同させながら、間隔を空けて登板させて育てるプランもあったが、24日に出場選手登録を抹消されて以降は2軍で汗を流している。小久保2軍監督は「今はファームで中6日で回っていくのが1番いいでしょう。あとは肩肘の状態。ただ、彼のトレーニングを見ていたら、多分、中6日の100球以内ぐらいは大丈夫じゃないかと思います」と方針を語る。計り知れないポテンシャルを秘める期待の右腕は、じっくりと目の前の課題と向き合い、一歩ずつ大投手への道を歩んでいる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)