3軍戦でメモリアルバースデー弾 鷹の育成・石塚綜一郎が追う渡邉陸のあと

ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:藤浦一都】

7日の3軍戦でバースデー本塁打を放った石塚

 ソフトバンクの育成選手・石塚綜一郎捕手が7日、タマスタ筑後で行われた九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズとの練習試合でバースデー弾を放った。3軍ではチームトップの5本目のアーチ。昨季、支配下登録され、今年1軍で鮮烈なデビューを飾った1歳年上の渡邉陸捕手に続けとばかりに持ち味の打撃でアピールを続けている。

 岩手県の黒沢尻工高から2019年の育成ドラフト1巡目で入団し、今年3年目の石塚。1、2年目の主戦場は3軍で、昨季は2軍公式戦でも6試合に出場。少ないチャンスの中で、10打数4安打と存在感を示した。今季はまず、2軍に定着するべく結果を求めて取り組んでいる。

 6月7日は石塚の21歳の誕生日。自らバースデーを祝う本塁打になった。バースデーアーチは「人生初です!」と照れ笑いするも、そこに満足感などない。「状態はだんだん上がってきていると思います。でも、僕はホームランバッターではない。ホームランより単打、守備のいないところに打つという特徴を出していかないと」。パンチ力があることも魅力の1つだが、そこに色気は出さない。

 持ち味の打力を磨いてきたからこそ、今季は強く振ることをテーマにしてきた。春先の3軍戦では、それが結果になって表れたが、2軍では結果につながらなかった。打てなくなると余計に強く振ることに気を取られ、悪循環に陥った。気づけば、自身の良い所も消えてしまっていた。2軍でのチャンスは減り、再び3軍暮らしの日々が続いた。

渡邉陸の活躍に「すごすぎて、自分に出来るのかなと」

 活路が見出せない中で、刺激になったのは1学年上の渡邉陸の躍動だった。昨夏に支配下登録を勝ち取った渡邉陸は5月28日の広島戦で初のスタメン出場を果たすと、2打席連続本塁打の大暴れ。アピールに成功し、1軍でも戦力になりつつある。

 これに驚いたのが他でもない石塚だ。「めちゃめちゃビックリですよ! 2年目の途中まで3軍で一緒にやっていて、そこから2軍に定着して、3年目に支配下。今年、1軍でバコーンって……ほんとにすごいなぁと思います」。同じように3軍からプロ生活をスタートさせ、遠い世界に見えた1軍の舞台にたどり着いた先輩の姿は励みにもなると同時に「すごすぎて、自分に出来るのかなと不安にもなった」とたじろいでしまうほどだった。

 石塚にとって同世代の“打てる捕手”候補は勝たなければいけない存在だ。「僕の中では守備力なんです。当たり前のことを当たり前に、投げる止めるを普通に出来ないと……」と捕手として信頼を勝ち取ることが必要だと自覚する。高谷裕亮2軍バッテリーコーチからは「形はできてきている」と成長を認められているものの、「あとは反応、準備能力。いつでも来い、どこでも来いという力がないといけない」と感じている。

 九鬼隆平捕手が首痛を抱えている影響もあり、先日、3軍から2軍にも参加した。海野隆司捕手が昇格したことで、2軍の捕手枠にも空きが生まれた。7日、8日と3軍戦に出場し、10日からはウエスタン・リーグの阪神戦に帯同する予定で「すごいチャンス。こんなチャンスもうこれから先ないんじゃないですか」と意気込み。「少しずつですが、自分の成長も感じてきているので、もっと上手くなりながら、2軍で結果を残したい」。育成から駆け上がった先輩捕手に追いつき、追い越すべく、まず支配下登録へと邁進する。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)