2軍降格の鷹・渡邉陸の胸中は? 1軍で掴んだ手応えと痛感した捕手としての課題

ソフトバンク・渡邉陸【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・渡邉陸【写真:藤浦一都】

プロ初スタメンで2打席連発と活躍した渡邉陸だが、13日に登録抹消に

 ソフトバンクの渡邉陸捕手が14日、2軍に合流し、タマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの中日戦にフル出場した。1軍では初スタメンで2打席連続本塁打を放つなど、強烈なインパクトを残したものの、13日に出場選手登録を抹消された。約3週間の1軍生活で渡邉が掴んだもの、感じた課題はどんなものだったのか。

 渡邉陸は交流戦初戦となった5月24日のDeNA戦でプロ入り後、初めて1軍に昇格。この3連戦全てに代打で起用された。本拠地PayPayドームに戻って迎えた同28日の広島戦では初めてスタメン出場すると、驚きの大活躍を見せた。

 第1打席でプロ初安打となる初本塁打を放つと、次の打席でも再びアーチ。衝撃の2打席連発に加えて、第3打席でも安打を放って、この日は4打数3安打5打点と大爆発。同じく育成出身の大関友久投手を7回1失点と好リードし、捕手としても堂々たるプレーを見せた。本拠地デビュー戦でいきなりお立ち台に上がる活躍だった。

 その後も代打起用で安打を放ったり、3度のスタメンマスクで攻守に存在感を示したり、と、確実に「渡邉陸」の名はホークスファンの間に知れるところになった。この3週間の1軍生活でどんなことを感じたのか。

「最初だけしか結果は残せなかった。モヤモヤしてるというか、出し切れてないというか…」

「結果を出さないといけないとかじゃなくて、出た時には打ってやろうと。勝たないといけないプレッシャーもあったんですけど、それ以上に楽しむというか、そういった感じでできたと思います。勉強の日々でした」

 渡邉陸はこう1軍生活を振り返る。緊張やプレッシャーも含めて、総じて楽しかったのだという。これまでの渡邉陸といえば“成功体験”を自信に変えて、成長を遂げてきた。課題は当然あるものの、攻守で手応えを感じる部分もあった3週間で、確実にまた大きな成長を遂げたはず。「森下(暢仁)さんから打てたのが1番自信になったかなと思います」。日本を代表する好投手から2本も本塁打を放ったのだから胸を張っていい。

 ただ、渡邉陸はこうも言う。「でも、なんか微妙です。最初しか結果は残せなかったんで。打てた時は嬉しかったですけど、モヤモヤしてるというか、出し切れてないというか……」。最初に与えたインパクトが強烈だったが故に、その後の成績に物足りなさを感じるのも無理はない。「もっと出来ると思えた打席はありました。打てたなと」と、どこまでも貪欲だ。

 1軍にいる間、王貞治球団会長に毎日のように声を掛けてもらった。「バッティングのことがほとんどですが、アドバイスをもらったり、頑張れって言ってもらったりしました。1番印象に残っているのは、バッティング練習でホームランを狙え、そういった打球を増やせと言ってもらったこと」。王会長が連日、気に掛けるのもポテンシャルの表れだろう。

「大関さんを引っ張れた感じはなくて、引っ張ってもらった感の方が強かった」

 一方で守備面では自身の力不足を実感した。「あまり大関さんを引っ張れた感じはなくて、引っ張ってもらった感の方が強かった」。1軍で3度組んだ大関友久投手とのバッテリーは18回で5失点と上々の結果を残したものの、そこにあまり手応えは感じられなかった。

 課題も多かった。「四球を恐れてストライクゾーンに投げさせてしまう所が悪い所」と自覚。投手とのコミュニケーションを曖昧にせず、自分の意志を全身を使って、投手に伝えなければならないと痛感した。また「あとから出てくるピッチャーの善し悪しは投げてみないと分からないのですが、僕が早く気づいていかないといけない」と、リリーフの投手と組む時の難しさもヒシヒシと感じたという。

 14日の2軍降格後最初の試合は、捕手としてフル出場した。制球に苦しむ先発のスチュワート投手を何とか1失点リードするも、リリーフ陣のリードに苦戦。小久保裕紀2軍監督は「田浦のいいところをあまり引き出せなかったし、最後、重田のスライダーのところも高谷コーチと反省していると思う。求められてるのは多分そこだと思う」と語っており、経験を積む必要性を感じる上で、大事な一戦となったようだ。

「2軍では1つ2つ飛び抜けられるようにと思って来ました。打ちまくります!」と意気込む渡邉陸。正捕手の座を狙う若鷹はファーム降格にも落ち込むことなく、1軍で見つけた課題を克服するため、前を向いている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)