鷹・周東のサヨナラ弾を呼んだ“耳打ち” 長谷川コーチが明かす「喧嘩するな」の真意

ソフトバンク・長谷川勇也打撃コーチ【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・長谷川勇也打撃コーチ【写真:藤浦一都】

「バッターとして自分の打てる球をコンタクトしていくというのは変わりはない」

 ファンも、首脳陣も、打った本人でさえも驚いた。18日にPayPayドームで行われた楽天との首位攻防第2ラウンド。同点で迎えた延長10回に勝負を決めたのは周東佑京内野手のバットだった。楽天の守護神・松井裕樹投手の内角高めに抜けた真っ直ぐを弾き返すと、打球は右翼ポール際のスタンドに飛び込んだ。劇的なサヨナラ2ランだった。

 試合後の周東自身も驚きを隠せなかった。「人生初」というサヨナラ打。「チャンスに弱かった人生なんで。誰も予想してなかったと思うし、自分自身が1番予想してなかった。ビックリというか。でも、試合を最後に決められると言うのは嬉しいなと思いました」と顔を綻ばせていた。

 この打席の直前、ネクストバッターズサークルにいる周東に、助言を授けた人物がいる。昨季まで現役として共にプレーしていた長谷川勇也打撃コーチだ。周東曰く、長谷川コーチから耳打ちされたのは「ボールと喧嘩するな」ということ。ボールと喧嘩とはどういうことなのか。長谷川コーチが自らその意味を説明した。

「もうちょっと的確なアドバイスができればよかったんですけど、なんかあまりピンとくるものがなくて、急にポンッと出たところというか」と苦笑い混じりに振り返る。「とにかく慌てなかったら大丈夫、打ち急がないでいけよという感じだったので『喧嘩しないように』と」。打ち急がず、焦らない。これを伝えようとした時、思い浮かんだフレーズが「ボールと喧嘩しない」だったという。

 長谷川コーチは打者の心得として、こうも言う。「ランナーがいても、ランナーがいなくても、サヨナラの場面でも、状況が変わっても、バッターとして自分の打てる球をコンタクトしていくというのは変わりはない。それをやってもらいたいという意味で、焦らないようにっていうふうには言いました」。走者がいても、いなくても、打者が打席の中でやるべきことは同じということを伝えたかった。

 この打席、長谷川コーチは「センター前とかレフト前に飛んでいってほしいなっていうような感じでアドバイスした」と“繋ぎ”を望んでいた。結果はそれを遥かに超える、試合を決めるサヨナラ弾。「すごいバッティングをしたと思います。もう本当にもう遥か上を、僕の想像の遥か上を越えていきました」。長谷川コーチでさえも驚く、まさかのホームランだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)