押しつけ指導や根性論「何も生きなかった」 岩隈久志氏が中学生指導に生かす経験
岩隈氏が学生時代に受けた厳しい指導は「プロでは生きなかった」
楽天やマリナーズなどでプレーした岩隈久志氏が創設した中学硬式チーム「青山東京ボーイズ」では、練習で指導者から厳しい声が飛ぶことは一切ない。ノックでは、上手く捕球できれば「ナイス!」。ミスをしても「今のこうできたんじゃない?」といった前向きな言葉が飛び交う。
チームでは、4つの約束を掲げている。その中の1つが「確かな技術を丁寧に」。選手が分からないこと、できないことを叱っても技術は向上しない。岩隈氏は「プレーのミスなんかは怒ることはまずないですね。失敗はプロでもします。ただ、失敗した後にどうするか自分で考えて動けるようになってほしい。失敗したときに反省して、どう改善してやっていくかが大切だと思っています」と語る。
岩隈氏が学生の時は、厳しい指導や根性論が当たり前だった。「何のために練習しているのか分からないこともあったし、それに反論したら『なに生意気なこと言ってるんだ』みたいな時代だった。でも結局、そうやって言われてきたことがプロの世界で生きたかと言われたら、生きるものはなかった」。自身の経験を、指導に生かしている。
一方で、指導する立場になって、むやみに怒鳴る指導者の気持ちが分かってきたという。「(子どもに対し)何度も同じこと言っているのにな……とか感じることもあります。僕らが小さい頃に言われてきたことって、大人がこういう時に感情的になってしまったんだろうなと。今この立場になって分かることは分かります」と理解を示す。
「でも結局、僕はそれがプロで生きたことは何もなかったから、子どもたちにそんなの言う必要ないなと。ただ精神的に追い込んだところで何の意味もない。中学生だし、野球以外にも失敗をするのは仕方がないことですから」。失敗するからこそ、成功にたどり着ける。その過程を、チームでは大切にしている。
保護者の負担となるお茶出し・お当番制度もない。「いらないでしょ。だって子どもの習い事ですよ。塾とかと一緒で、ただ預けてもらうだけでいいと思うんです」。無理な押し付けがない分、前向きに手伝ってくれる親も多いという。「それが本当の“お手伝い”ですよね。本当にありがたいです」。子どもだけでなく、親も一緒に楽しめるチームを目指している。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)
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