新井貴浩のFA流出で「右目の辺りが落ちてきた」 補償で悩み顔面麻痺に…編成部の苦労
2007年オフに主力選手がFAで流出…編成の川端順氏は補償問題で頭を悩ませた
FA、トレード、ドラフト……。球団編成部の仕事は多岐にわたる。元広島投手の川端順氏(徳島・松茂町議)は2006年にフロント入り、2008年からは編成グループ長を務めた。チーム構成を考えながらも、選手の生活にも直接影響を与えるシビアな仕事。ストレスも溜まる。2007年オフに現監督の新井貴浩内野手が阪神にFA移籍した際、川端氏はその補償問題で大いに悩み、顔面麻痺になってしまったという。
「あの時は編成担当だったんですけど、ある日、右目の辺りが落ちてきたんですよ。目のところの筋肉が減ってきて……。もう完璧にストレスが原因でした。病院に行ったら『何か大きなストレスを抱えていませんか』と言われましたからね。それで首のところに注射しました。8回打ったら治りましたけどね」。それほどまでに神経を使ったのはFA移籍の新井氏の補償を人的補償にするか、金銭補償だけにするかを任せられていたからだった。
「阪神の選手のビデオを見るんですけど、なかなか決められなかった」。チームにも、その対象選手にも関わる大きな問題。考えれば、考えるほど……。ついには体に異常が起きてしまったわけだ。そんな中で決めたのが赤松真人外野手(現広島1軍外野守備走塁コーチ)の獲得だった。「赤松は足があるんでね。何か飛び抜けている選手がいいと思って、会議で赤松でお願いしたいんですけどって言いました。松田オーナーにもいいんじゃないかと言っていただきました」。
2008年、赤松は125試合に出場した。前年の阪神では28試合にとどまっていたのが、4倍以上に増えた。4月29日の巨人戦(東京ドーム)では「1番・中堅」で出場し、グライシンガーからプロ初本塁打となる先頭打者アーチ。翌4月30日も高橋尚成投手から2試合連続の先頭打者弾。さらに5月1日も4回に木佐貫洋投手に一発を浴びせた。その後も貴重な戦力として活躍した。
「3試合連続ホームランでしたからね。オーナーに『おい、あいつ足があるって言わなかったか、ホームランバッターか』って冗談で言われてホッとしたのも覚えています」と川端氏は振り返った。大変だった分、思い出深い。「赤松は今、コーチをやっているんで、安心しています」とにっこりだ。