燕「ドライチ4兄弟」“末弟”の今 25歳で突如引退…軟式で務める意外な守備位置
燕の中心投手として活躍した赤川克紀さんは25歳シーズンで引退
ヤクルトに、かつてすい星のごとく現れ、25歳の若さで現役引退した投手がいた。赤川克紀さんは高卒3年目の2011年に台頭し、翌2012年にはオールスターに出場するなど活躍したが、2015年に引退した。現在は会社員生活を送る一方、社会人軟式野球クラブ「東京ヴェルディ・バンバータ」で白球を追う。
プロ野球を離れて8年。今月末日で33歳になる赤川さんはまだまだ若い。やや腰回りに肉がついたように見えるが、柔らかな笑顔はヤクルト時代と変わらない。当時は「ジャイアン」と呼ばれた左腕は現在、1歳半になる長女の父でもある。「軟式をやって、もう8年。ヤクルトの在籍年数より長くなりました」と笑う。
宮崎商から2008年ドラフト1位で入団した左腕は3年目の2011年、夏場に台頭すると6勝をマーク。巨人とのクライマックスシリーズ・ファーストステージでは1勝1敗の第3戦に先発し、7回途中無失点の快投を見せ、チームをファイナルステージに導いた。
翌2012年は8勝を挙げ、オールスターにも出場。規定投球回にも到達した。村中恭兵さん、増渕竜義さん、台湾プロ野球・楽天モンキーズに先日移籍した由規投手とともに「ドライチ4兄弟」と呼ばれるなど人気を博した。
ところが、翌2013年から不振に。入団後、初めて1軍登板機会のなかった2015年オフに戦力外通告を受けると、現役引退を決めた。25歳。再起にかけてもおかしくない年齢だったが、赤川さんの決断は早かった。「まだできるかなという思いもあったのですが、(プロ野球に)しがみつくよりも、違うステップを踏むのもありかなと思いました。自分の中でもはもう25歳、という感覚でした」。
社会人軟式クラブ「東京ヴェルディ・バンバータ」に在籍して8年目
プロ野球は競争の激しい世界。現役にこだわり、苦しむ選手を実際に見ていた。しかも当時は夫人との結婚を考えていた時期(翌2017年に結婚)。目の前の生活もある。「早目の決断をした方がいいのではないかと思いました」と当時の心境を語る。
引退後、すぐに東京都内の建築資材会社に就職。現在は営業で若手社員を管理する立場になった。入社当初は名刺交換に慣れず、電話対応でも悪戦苦闘。「言葉使いは苦労しましたね……」と笑いながら振り返る。
プロの世界から身を引いたが、野球への情熱は衰えない。引退翌年に加入した東京ヴェルディ・バンバータで、現在も休日に白球を追う。投手は昨年で“卒業”し、今季からは一塁に専念。定評のあったバッティングでチームに貢献している。「東京の一番上のリーグですし、レベルは高いです。150キロを投げる投手もいますからね」。
公私ともに充実した日々を送る赤川さん。プロの世界を離れても、別の形で野球と向き合い、日々の活力にしている。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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