「1軍の試合は見ないように」 悲運の抹消から1か月半…レオ大砲の劇打生んだ“全集中”
4回に同点二塁打 6回には内野安打で“快足”披露
■西武 4ー2 楽天(17日・ベルーナドーム)
重量級の期待株が帰ってきた。左脚の内転筋を痛めて離脱していた西武・渡部健人内野手が17日、本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦にスタメン「7番・三塁」で復帰。4回に相手先発の田中将大投手から左翼線へ同点適時二塁打を放つなど、4打数2安打1打点の活躍でチームの4-2の勝利に貢献した。悲運の出場選手登録抹消から1か月半。今度こそ、スターダムへの階段を駆け上がる。
西武は0-2で迎えた4回、デビッド・マキノン内野手の中犠飛で1点差に迫り、なおも2死二塁として渡部が第2打席に立った。初球のスライダーを見送った(ストライク)後、2球目の真ん中低めのスプリットを一閃。打球は左翼線ギリギリで跳ねて同点打となり、渡部は二塁ベース上で両手を上げて万歳した。
プロ3年目にして、田中将とは初対戦。2回の第1打席では初球のストレートを打って左飛に倒れており、殊勲打となったスプリットは初見の球種だったはずだが、完璧にとらえていた。「実は、自分ではスライダーを打ったと思ったのですが、ベンチでみんなにスプリットだったと言われて『あれっ?』と。斜めに曲がった気がしたのですが……」と“天然”ぶりも全開。球種が頭に残らないほど、ボールに集中していたということかもしれない。
6回1死走者なしでの第3打席は、田中将から三遊間へゴロを放った後、全力疾走で遊撃内野安打をもぎ取った。「準備万端だったので、(7月に故障した脚の)不安を見せないように走りました」と胸を張る。176センチ、115キロの巨体だが、もともと足は遅くない。今季も2盗塁(1盗塁死)を決めている。「この体型の割には、速い方だと思います」と笑った。
今季初の三塁守備に就き「マジで焦りました」
持ち味の打撃でアピールしたが、実はこの日、渡部は三塁の守備で頭がいっぱいだった。大学時代はサードの方が本職だったが、今季の1軍出場はこれまで全てファーストとして。2軍でも試合で三塁を守ったのは、前日(16日)のイースタン・リーグ楽天戦1試合だけだった。
「緊張しかなかった」と明かす通り、最初の打球処理はヒヤヒヤ。3回先頭の村林一輝内野手が放った三遊間のゴロを、軽快なフットワークでさばいたまではよかったが、一塁へ高投。一塁手のマキノンがジャンプして捕球し、一塁ベース上に着地してかろうじてアウトとなった。「マジで焦りました。マック(マキノン)が助けてくれて、ホッとしました」と胸をなでおろした。
今季開幕は2軍スタートだったが、山川穂高内野手、中村剛也内野手の相次ぐ離脱をうけて、5月27日に初昇格。4本塁打を放つなど打棒を振るい、4番に定着しつつあった。ところが、好事魔多し。7月1日にベルーナドームで行われたソフトバンク戦で、走塁中に内転筋を痛め、翌2日に抹消された。
「きつかったです。このまま行きたいと思っていたところだったので。なんとか腐らずにやってきました」とリハビリ期間を振り返る。「僕が(テレビなどで)1軍の試合を見ると負けてしまうことが多かったので、見ないようにしていました」と複雑な胸中ものぞかせた。
勝利後は、7回2失点の好投で今季7勝目を挙げた隅田知一郎投手とともにお立ち台に上がり、歓声を浴びた渡部。「楽しいですね。ファンの声援は力になります」と感慨深げにうなずき、「楽しいです、本当に」ともう1度繰り返した。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)