「迷いはありません」転向1年で“タイトル”獲得 飛躍の年へ…オリ村西良太の現在地

オリックス・村西良太【写真:北野正樹】
オリックス・村西良太【写真:北野正樹】

2軍で最優秀防御率のオリックス・村西良太「迷いは全くありませんでした」

 気恥ずかしさを捨ててレッドカーペットを駆け上がり、壇上で胸を張った。昨年11月28日、東京都内で行われた「NPB AWARDS 2023」のファーム表彰式に、オリックスの村西良太投手は出席した。ウエスタン・リーグの最優秀防御率に輝いて招かれた晴れの場は、1軍で新しい自分に挑戦するための決意の舞台に変わった。

 兵庫・津名高、近畿大を経て2020年にドラフト3位でオリックスに入団した横手投げの右腕。新人年は開幕ローテーション入りを果たしたが、右肘を痛めて手術に踏み切った。2021年に復帰し、2022年は27試合に登板、防御率4.81。およそ1か月の間に2度も本塁打を浴びてのサヨナラ負けを喫し、自信を失いフォームも見失ってしまった。

 活路を開いてくれたのは、平井正史投手コーチ(当時、育成担当)の下手投げ転向へのアドバイスだった。村西は、後がないところまで追い込まれており「何をやっても打たれてしまっていた時期で、フォームを変えることに迷いは全くありませんでした」と振り返る。2022年の秋季キャンプでは中嶋聡監督から助言を受け、試行錯誤を繰り返した。

 迎えた2023年シーズンは、2軍で22試合に登板し6勝5敗、防御率1.73で最優秀防御率に輝いた。1軍の表彰式より先に始まったファームの表彰式。イースタン・リーグ最多勝(8勝)をマークした35歳左腕の楽天・塩見貴洋投手(現役引退)も出席したが、ほとんどが若手選手だった。

 オリックスから選出されたのは、首位打者と最高出塁率の2冠に輝いた池田陵真外野手、最多勝利の育成・佐藤一磨投手、最多盗塁の渡部遼人外野手。26歳の村西より歳下の選手たちと同じ壇上に上がっただけに「当初は嬉しいような、嬉しくないような気分でした」と苦笑いだった。

オリックス・村西良太【写真:荒川祐史】
オリックス・村西良太【写真:荒川祐史】

アンダースロー転向で得た“収穫”

 プロ4年目を終えた村西は、本来なら1軍のマウンドで活躍していなければならない立場。複雑な思いもあったが、榊原定征コミッショナーからメダルを贈られ「アンダースローに挑戦して1年。新しい自分を認めてもらえたことに喜びを感じました」と話す。

 もちろん、満足はしていない。セレモニー直後には現実を突きつけられた。およそ3時間後に始まる1軍選手を対象とした「AWARDS」の設営準備のため、ステージ下に設けられた受賞者の丸テーブルはすぐに片付けられ、観客用の椅子が一気に並べられた。村西は「ファームの表彰式とは華やかさが違いましたね。次は1軍のタイトルを獲ってここに立ちたいと思いました」と力を込める。

 2023年は、1軍で7試合に登板し0勝1敗、防御率6.17。好調時に昇格のタイミングが合わなかったこともあり、チャンスを生かすことはできなかった。今季の起用について厚澤和幸投手コーチは「やっとフォームが合って来たので、今年は1軍の競争の中に入れてあげたい。ちゃんと勝負をさせて評価をしたい」と、春季キャンプで先発要員としてテストすることを明言した。

 アンダースローに転向し球速は落ちたが、収穫もある。サイドハンドではスライドせず曲がり落ちていたスライダーが、浮き上がって曲がるようになった。投球フォームも大きく弧を描いて地表すれすれに腕を振る下手投げではなく、腕を上から下にたたきつけるようにして無駄な動きがない。力強く、かつ制球力も身に付けた。「やはりコントロールが課題だと思いますので、1軍でずっと投げるためにもそこがよくなるように頑張りたいですね」。新しい姿で1軍での飛躍を誓う。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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