新人王獲得から暗転「消化しきれなかった」　元阪神ドラ1の反省…選んだ「死に物狂い」

今季から「オイシックス新潟アルビレックスBC」でプレーする前阪神の高山俊

　2023年限りで阪神を戦力外となった高山俊外野手は、今季から新たにNPB2軍に参加する「オイシックス新潟アルビレックスBC」を新天地に選んだ。「今まで通り全力で取り組むのはもちろんですが、それで結果が出なかった。変えるところは変えないといけないと思います」。再起を図るかつての新人王が、現在の心境を語った。

　明大では東京六大学リーグで通算131安打を放ち、最多安打記録を更新。2015年ドラフト1位で阪神に入団した。1年目に当時の球団新人最多となる136安打を放ち、新人王を獲得。無我夢中で、気がついたらシーズンが終わっていた。

「1年目は怖いもの知らずでした。多少ミスをしても許してくれるだろうと思っていた。でも『若いから』で済まされるのは最初だけ。たくさんの人にアドバイスをいただき、自分でも色々考えながらやっていましたが、消化しきれなかった。そこが上手くいかなかったと思います」

　2年目以降は徐々に出場機会を減らした。新人王を獲得した好打者に対し、相手も研究を重ねて挑んでくる。このままではいけないと、シーズン中はもちろん、オフシーズンにもさまざまなことに取り組んだ。「僕も相手のピッチャーのデータをスコアラーさんにもらっている。そこはお互い様。それを上回るところができなかった。技術不足です」と反省を口にする。

　プロ8年目の昨季は1軍出場がなく、オフに戦力外通告を受けた。結果を出さなければ生き残れない厳しい世界だとわかっていた。「去年、1軍に上がれなかったという結果がこうなった。毎年ドラフトで新入団選手が入ってくる。やめなければいけない選手が何人も出てくることは理解しています」。タテジマのユニホームは脱いだが、体が動かないわけではない。「まだ野球を続けたい」。そう思った。

トライアウト参加は「全力でプレーしている姿を見せたかった」

　新たなプレーの場を求め「プロ野球12球団合同トライアウト」に参加。応援してくれているファンのためという思いも強かった。「ドラ1」「元新人王」のプライドは全くなかった。

「タイガースのユニホームを着ている僕を応援してくれている方がたくさんいました。戦力外になっても『応援している』と言ってくれた。そういう方々に、タイガースのユニホームを着て、全力でプレーしている姿を見せたかった。トライアウトを受けなければ、見せることができないまま去ることになってしまう。ファンの方々への恩返しが、トライアウトを受けた一番の理由です」

　トライアウトでは5打数2安打2四球と存在感を示したが、NPB球団から声がかかることはなく、新潟のオファーを受けた。再び野球ができる環境を与えてもらえたことが本当に嬉しかった。コーチ兼任の話もあったが「死に物狂いで必死で挑戦したい」と選手に専念することを選んだ。今年31歳になる。先のことを考えていないわけではないが、今は新潟に恩返しをすることが最優先だと思っている。

「NPBを目指す若い子たちと一緒にプレーするのは初めてです。彼らの姿から学べることもあると思うし、野球の見方も変わると思う。ちょっと違う考え方も出てくるんじゃないかなと思っています。少しですけど、僕がプロで経験したことも伝えたいと思っています」

　阪神での8年間、支えになったのは応援してくれる人たちだった。再びNPBの舞台でプレーし、期待に応えたい。再起をかけた第2の野球人生が始まる。

（篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki）