清原&松坂不在も超満員…46年かかった初OB戦 「もう少し早く」開催できなかったワケ

MVPを獲得した秋山幸二氏【写真:小林靖】
MVPを獲得した秋山幸二氏【写真:小林靖】

埼玉移転46年目…秋山、メヒア、デストラーデ、工藤、ナベQらが躍動した

 西武の球団史上初のOB戦「LIONS CHRONICLE 西武ライオンズ LEGEND GAME 2024」が16日、ベルーナドームで行われた。満員札止めの観客2万7795人が詰めかけ、かつて黄金期を彩った元スタープレーヤーの一挙手一投足に歓声を送った。それにしても、1978年のオフに「クラウンライターライオンズ」を西武が買収し、本拠地を福岡から埼玉に移して「西武ライオンズ」が誕生してから46年目。これまでOB戦が開催されなかったのは、なぜだったのだろうか。

 秋山幸二氏は攻守に躍動してMVPを獲得し、エルネスト・メヒア氏は現役時代さながらの豪快な一発を左翼席中段に放り込んだ。オレステス・デストラーデ氏は張り切りすぎたのか、フルスイング後に膝付近を痛めて倒れ込み、メヒア氏の肩を借りて退場する心配なシーンがあった。

 工藤公康氏はストレートで追い込んだ後に、得意のカーブで空振り三振を奪う。現在西武でGMの要職にある渡辺久信氏は、現役時代をほうふつさせる流れるような投球フォームで投げ込む。出場選手中最年長の80歳の土井正博氏は、ライナーで一、二塁間を破り打球を右前に運んだものの、右翼・大友進氏の好返球に一塁で刺された。

 そして4回、「チームLIONS」を監督として率いる東尾修氏がマウンド、「チームSEIBU」監督の田淵幸一氏が打席に立ち、直接対決。カウント3-0からの4球目が体付近を通過すると、田淵氏はヘルメットを投げ捨てマウンドへ突進した。両軍全選手もベンチを飛び出し、あわや乱闘のムードとなったが、東尾氏が帽子を取って土下座。結局2人は熱い抱擁を交わした……。こんな寸劇にも、ファンは沸き大喜びだった。

 試合終了後、満員のスタンドに東尾氏は「びっくりしたよね。日本シリーズみたい」と感嘆。田淵氏も「そうだね。日本シリーズくらい(観客が)入っていたよね」とうなずき、「満員御礼になって、お客様は神様ですというけれど、たくさんのファンの皆さんの前で野球ができる幸せをつくづく感じました」と感慨深げだった。

現役選手と松井稼頭央監督へエール「他球団にも飛び抜けたチームはない」

 ただ、東尾氏は「できれば、もう少し早くやってほしかった」とつぶやいた。さらに、田淵氏も「確かに、もうちょっと早く、私たちがまだ投げて打てる時代にやってもらいたかった」と応じる一幕もあった。

 西武は森祇晶氏の監督在任中の9年間(1986~94年)に8度のリーグ優勝、6度の日本一に輝くなど、人気と実力を兼ね備えてきた球団だ。なぜこれまでOB戦が開催されなかったのだろう。

 デニー友利氏(現巨人編成本部長補佐兼国際スカウト)は「西武にOB会が存在しないからでしょう。『OB戦より先にOB会をつくるべきだ』という声もありますよ」と見る。チームが福岡から埼玉に移転し、歴史が一時分断されたこともあって、OB会立ち上げの気運が盛り上がらず、OB同士の連係が難しかったようだ。

 とはいえ、現実にOB戦が1度開催されたことは、今後へ向けて大きな一歩となる。球団関係者の間にも「今回参加しなかった清原和博氏、松坂大輔氏らをOB戦で見てみたいと感じたファンも多いと思う。毎年とはいかなくても、ある程度定期的に開催できればいいですよね」との声がある。

 田淵氏は昨季5位に終わった現役の松井稼頭央監督へ向けて「まずはAクラス。投手陣は悪くないし、今季は他球団にも飛びぬけたチームがない。夏場を過ぎて3位くらいにいれば、Aクラスに入れる」とエールを送ったが、「われわれ2人も陰ながら応援したい」と締めようとすると、東尾氏から「私は陰ながらではなく、表から応援しますよ。あなたはまだ阪神のことを考えているのではないの?」とツッコミを入れられ、笑いを誘った。

 この和気あいあいとしたムードが、1度きりではもったいない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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