捕手挑戦で見えた“新たな景色” 昨季2軍首位打者…池田陵真が感じた「球筋」
オリックス・池田陵真、捕手挑戦は「良い経験をさせてもらった」
2週間の挑戦は無駄ではなかった。「実戦でマスクを被ることはありませんでしたが、良い経験をさせてもらったと思っています」。オリックスの高卒3年目、池田陵真外野手は昨年の高知秋季キャンプで捕手に“挑戦”したことを笑顔で振り返った。
「秋季キャンプで取り組んでみたら?」という福良淳一GMと中嶋聡監督からのアドバイスが、グローブをミットに持ち替えるきっかけだった。池田は大阪桐蔭高時代に1年秋からベンチ入りし、3年は主将として春夏連続して甲子園出場を果たした。高校通算25本塁打を放ち、プロ2年目の昨季、ウエスタン・リーグで規定打席に満たなかったものの、首位打者と最高出塁率(いずれも認定)の2冠に輝いた。
池田は、大阪・忠岡ボーイズ時代に捕手を経験し、U-12、U-15の日本代表に捕手として選ばれたことがあった。出場機会を増やし、自慢の長打力を生かす狙いが首脳陣にあった。秋季キャンプの参加メンバーで、捕手が1人だったというチーム事情も、池田の捕手挑戦を後押ししたのだった。
当初、福良GMは「ゲームでどんな姿を見せるのか、1年間は見てみようと思う」と本格的な捕手転向を示唆していたが、秋季キャンプ中盤に入団テストのため合流した香月一也内野手が巨人時代に捕手の練習をしていたことが判明。実技を通して、福良GMが「香月の方がいけるんじゃないか」と話すなど、池田のチャレンジはひとまず終わることになった。
捕手挑戦の“収穫”は「速いと思ったボールが、これまで打席では遅く見えていた」
2週間での収穫は、捕手として受ける球速と打席での感覚の違いだった。「速いと思ったボールが、これまで打席では遅く見えていたんです。これはちょっとした自信になりました」。捕手としては速く感じたボールが、打席ではそれほど速くは見えなかった。改めて打席で速球への対応ができていることを確信したのは、新たな発見だった。
「この人(投手)のボールは、どんな球筋でくるのだろう? と考えます。だから、そこも打者としては生きてくると思います」と捕手目線の効用も語る。また「上半身で打ってしまう癖があった」という池田にとって、捕手の練習は下半身の強化にもつながった。
昨季は2軍で「4番」として起用されることが多かった。「打順は1番であろうが、4番であろうが、8番であろうがやるべきことは変わらないと思っています。だから、意識はしていません。得点圏で(打席が)回って来ることが多いので、チャンスでは(走者を)かえしたいという思いは強くなります」。
ファームでのタイトル獲得とはいえ、相手チームは対策を練ってくるはずだ。「対策はとくにありません。(カウントを)追い込まれても、追い込まれてからの対応で頑張ればいい。そこで打てないと、上(1軍)に行ってもまた(2軍に)落ちると思います」。捕手挑戦で得た新たな視点で、自慢の打撃を磨く。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)