「どんどん大事になってくる」 円陣で誓った親孝行…宗佑磨が“おかん”に届けた3安打

オリックス・宗佑磨【写真:荒川祐史】
オリックス・宗佑磨【写真:荒川祐史】

オリックス・宗佑磨「おかん、頑張るよー!」の叫びから3安打猛打賞

■楽天 5ー4 オリックス(10日・京セラドーム)

 バックネット裏から注がれる熱視線に“愛情”を感じていた。オリックス・宗佑磨内野手は10日、本拠地・京セラドームで行われた楽天戦に「6番・三塁」で出場し、5打数3安打と気を吐いた。今季初の猛打賞で、打率を.250にまで引き上げ「おかんが来てくれていたので!(笑)。おかんが観に来てくれた試合、結構打てているイメージ。だから、今日も絶対に“おかんパワー”です!」と目尻を下げた。

 試合前、円陣で声出し役を務めた宗は「今日はですね、おかんが来てるんで! おかん、頑張るよー!」とバックネット裏の方向に手を振った。「良い席を偶然、譲って頂けたんです。シーズンシートを持っている選手から。そこに、今日はおかんが座っていて、円陣の直前に『今日はおかんがいるんですよ?!』という雰囲気で、そのまま円陣の声出しになった流れです」。無邪気に振った両手が“苦悩”も一掃した。

「(結果を)考えたくないというか、ね。今日もヒットを打ちに行くと“思わない”ようにしていました。どういう形(フォーム)で打つのかを考えて、結果を気にしないようにして打席に入っていたんです。『ヒットを打ちたい』という精神で打席に入ってしまうと、無理に当てにいってしまったり、いつもの形でない感じになってしまうので」

 試合前時点では打率1割台と、思うような成績ではなかった。「数字を気にし過ぎると良くないと思うんですよね。ただ、どうしても気にしてしまいますけど。もちろん、ヒットを打つために一生懸命やっているんですけど、試合では『ヒットを欲しがってはいけない』です。矛盾しているんですけど、そういうことだと、僕は感じています」。全てをリセットして“無心”で臨んだ一戦。3本のヒットを放ち、現地観戦の母を喜ばせた。

「客観的に自分を見るようにしています。そりゃ、どう考えたって欲しいじゃないですか? ヒットが。なにがなんでもHランプが欲しいです。でも、そう思っているうちは灯らない。だから、不思議なんですよね」

母から感じる愛情ある言葉…「いつもあんた外食ばかりでしょ?」

 高卒プロ10年目の27歳。たくさんの愛情を込め、大きく育んでくれた母に感謝の気持ちしかない。別々に暮らす今でも、愛車で通えるほどの距離に住んでおり「オフの前日や、デーゲーム終わりに(母の)ご飯を食べにいきますね。やっぱり、ホッとしますよ。おかんと過ごすとリラックスできますよね。親は大事にしないといけないですよ、本当に。最近、歳を重ねる度に……より深くそう思うようになりました」と丁寧な言葉で表現する。

「昔もそうでしたけど、当時と比べるとどんどん大事になってくる。(自分が)大きくなってすごく思うことは、もっとちゃんと会ったり、親孝行をしたり……。そういう時間を過ごしたいなと思いますね」

 1点差で敗戦した試合後、一塁側ベンチで野球道具の片付けをしながら、母に向かって右手を上げた。まるで、幼少期に少年野球を見守ってくれた時のように映った。

 今でも週末の食事は母に“甘える”ことがある。「おかんのご飯、なんでも美味しいです。天ぷらとかも作ってくれますよ。あまり油物は摂らないようにしていますけど、母親が作るご飯は、味も栄養も安心して食べられる。まずいと思ったことなんて1回もないです。僕の家庭の味がします。全部、本当に美味しいです」。

 2人にしかわからない空間もある。「『次いつ?』という連絡が多いです(笑)。いつも『また行く!』と返事しています」。プロアスリートになった自慢の息子は、誇らしいばかりだ。母から伝えられた“うれしい注意”を、宗は照れながら教えてくれた。

「いつもあんた外食ばかりでしょ? うちでは味の薄いものを食べていきなさい」

 大きな愛情で包み込んでくれる母へ。孝行息子はかつて、こう言っていた。「母さんがいなかったら、今の僕はいないです」。一生、変わることのない言葉だ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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