西武ドラ1左腕は「大したもの」 受けて実感…炭谷銀仁朗も目を見張った“対応力”
西武・武内は10日のロッテ戦で7回4安打2失点と好投…炭谷と“14歳差バッテリー”
■ロッテ 3ー2 西武(10日・ベルーナドーム)
西武のドラフト1位ルーキー左腕・武内夏暉投手は10日、本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦に先発し、7回4安打2失点に抑えた。チームは延長10回の末に競り負けたが、22歳の武内は7回1安打無失点の快投でプロ初登板勝利を達成した前回(3日、オリックス戦)に続いて、新人離れした実力を見せつけた。2試合連続で武内の球を受けた19年目のベテラン・炭谷銀仁朗捕手も素材の高さに目を見張った。
武内はこの日も、最速150キロを計測したストレートにツーシーム、カーブなどをまじえ奮闘した。前回登板と違っていたのは、序盤に得意のツーシームが抜け気味だったこと。初回には同じ“ドラ1新人”の上田希由翔(きゅうと)内野手の右上腕付近に、3回にはグレゴリー・ポランコ外野手の右肘に死球をぶつけた。いずれも左打者に対するツーシームだった。
それでも徐々に修正し、4、5、6回はいずれも3者凡退で片づけたが、惜しむらくは、追い込んだ後の失投を痛打されたことだ。3回2死一塁では、山口航輝外野手にカウント0-2から、内角を狙った147キロの速球が外角に入ったところを先制の中越え適時二塁打とされた。7回2死三塁で友杉篤輝内野手に中前適時打されたのも、カウント1-2と追い込んでから真ん中寄りに失投したストレートだった。
「なかなか自分のリズムをつかめなくて苦しかったです。ツーストライクから失投を打たれたことは教訓になります」
反省した武内だったが、前回に続いてバッテリーを組んだ炭谷は「序盤は抜け気味でしたが、それでも球の強さがありましたし、中盤以降は本人が修正しました」と称えた。さらに「死球が2つあったので、左打者に対してはもっぱら内角に使っていたツーシームを『外角に使おうか?』と聞くと、『はい、できます』と言ってくれて、その球でポランコを三振に取ったりしていましたからね、大したものですよ」と感心しきりだ。
6年ぶりに古巣復帰の炭谷は本拠地ゲームに「実家に帰ってきたようなもの」
さらに「前回登板では、右打者の膝元へのスライダーを1球も使いませんでしたが、今日はカットボールとスライダーをそこに投じました」と配球に変化を加えたことを明かした。その上で「徐々にレベルアップしていて、対応力にびっくりしています。オープン戦時点から観察していますが、今のところ、精神的にも弱さは全く感じません」と評価した。
ルーキーの開幕後の優れた投球内容に、球団内外で「今季先発ローテの柱となるのはもちろん、将来的には侍ジャパンの一員として戦える器」との声も上がり始めている。そんな逸材の成長に、炭谷が大きな役割を果たすかもしれない。こちらは36歳のベテランで、13年間西武で活躍した後、2019年に巨人へFA移籍。2021年のシーズン途中に金銭トレードで楽天に渡り、今季6年ぶりに古巣復帰を果たしている。
昨季リーグトップの盗塁阻止率.412をマークした24歳の古賀悠斗捕手が正捕手を張る中で、炭谷も10日現在、3試合でスタメンマスクをかぶっている(武内2試合、松本1試合)。打っても打率.400(10打数4安打)と好調。「6年ぶりといっても、僕にとって西武は西武です。僕はもう他球団を挟んでいるので“生え抜き”ではありませんが、実家に帰ってきたようなものです。リフォームしたとしても、実家は実家でしょ?」と居心地がよさそうだ。
例えて言えば、1人暮らしをしていた息子が実家に戻り、生まれたばかりの甥っ子の世話を積極的に見るようなものだろうか。今後も武内との“14歳差バッテリー”から目が離せない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)