筒香嘉智が2本のバットに込めた未来への期待 育成新人・小笠原蒼へ伝えたこと
育成3位の小笠原蒼は筒香の豪快弾に憧れ幼少期からベイスターズファン
5年ぶりにDeNAに復帰した筒香嘉智内野手は、打撃の感覚を取り戻すためにファーム調整を続けている。その姿は、若手選手にとってこれ以上ないお手本。筒香に憧れ幼少期からベイスターズファンだった育成3位の小笠原蒼内野手は、そのすべてを吸収しようと一挙手一投足を必死に追いかけている。
打撃練習中、小笠原が真っ直ぐな瞳で筒香に話しかけた。2人の会話は次第に熱を帯び、バットを持った筒香が実演を始める。「バットの出し方で悩んでいることがあったので、いい機会だったので聞きました」と小笠原。臆せずぶつかってくる18歳に、筒香もしっかりと応じた。
小笠原にとっては“まさか”の機会だ。愛知県出身ながらナゴヤドーム(現バンテリンドーム)で見たDeNAの試合をキッカケに、筒香の豪快なアーチに心を奪われベイスターズファンになった。背番号「125」はもちろん、憧れの存在がつけていた「25」から取ったもの。それが入団1年目にして、同じユニホームに袖を通すことになった。
「最初に練習に来られた時は、夢を見ているのかなと自分の中でも整理できなくて……」と笑う。しかし自らに憧れていることを知った筒香はすぐに「蒼」と呼び、気に掛けてくれた。
打撃技術、考え方だけじゃない…サラダ大盛りも“真似”に「可愛いよね」
そしてバットを2本、プレゼントされた。そのうちの1本を相棒に、とにかく振り込む日々だ。1日のルーティンも学び「朝起きた時点から打撃に全てつなげるという話が一番印象に残っています。ベイスターズに入ってからも準備の仕方の考えは少し変わってきていたんですけど、筒香さんの話を参考にしたら自分の中でしっくりくることが徐々に増えてきたので継続してやろうと思っています」と考え方にも影響を受けた。
それだけではない。筒香がサラダを大盛りにしたと聞けば、自らもサラダを大盛りに。これには筒香も「可愛いよね」と思わず目尻を下げる。小笠原だけではないが、将来のチームを担う若者たちへ「みんな未来あるよ。入ったときにうまい下手はあまり関係ない。ここからどれだけやって、何を掴むかだから。試合で打つため、いい投球をするために何を掴むか。頭を使わないとダメだよ」と成功するために必要なことを説いた。
“育成”だろうと、これからの自分次第で未来は変わる。筒香の言動に、小笠原も再び歩むべき道筋を定めた。
「筒香さんを見て、ここまでやらないとあそこまでいけないんだという基準がある程度自分の中にできました。僕みたいな育成選手が、そこからちょっとでも意識を下げてしまったらダメだと思っている。まずは今やっている課題を克服していけば必然的にいい結果が出ると思いますし、結果を出し続ければ支配下に近づくと思います」
1軍での共演を目指して……。憧れ続けた背中から学ぶことは、果てしなく多い。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)