華やかな“球歴”も「なんとも思わないです」 甲子園の躍動から数年…21歳・来田涼斗の現在地
オリックス・来田涼斗「自分を見つめ直して臨んでいます」
一歩ずつ、着実に確実性を高めている。オリックス・来田涼斗外野手が1軍定着を見据え、プロ4年目のシーズンに臨んでいる。「高校時代から一喜一憂はしないタイプですね。もう4年目なので、そろそろ結果も欲しいですが、しっかりと自分を見つめ直して臨んでいます」。いつも通り、静かな口調で切り出した。
21歳ながらも、華やかな球歴を持つ。小学6年生でオリックスジュニアに所属し、明石商業高(兵庫)では入学直後からベンチ入り。1年夏から3季連続甲子園に出場し、2年春の準々決勝(智弁和歌山戦)では先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打を放ち、2年夏の準決勝でも先頭打者本塁打を描いた。
2020年ドラフト3位で入団したプロの世界でも、1年目の1軍公式戦デビューとなった日本ハム戦で「プロ初打席、初球本塁打」を含め、高卒ルーキーとして37年ぶりの1試合3安打をマークするなど、鮮烈なデビューを飾ったことは記憶に新しい。ただ、プロ2年目は出場10試合、3年目はオープン戦で打率.346とアピールし、開幕1軍を掴んだものの出場4試合にとどまった。
鋭いスイングから広角に打球を飛ばせる打撃力が持ち味。1軍定着のチャンスを掴みきれない理由には「1球で仕留められない」という課題を挙げる。
原因は分かっている。上体が浮いてしまいボールを捉えられないこと、そして内角の変化球に手が出てしまうことだという。2023年シーズン後のみやざきフェニックス・リーグ、高知秋季キャンプでボールを見極め、コンタクトを意識した練習を重ね、日本シリーズの出場資格の40人入りした。
「自分探しの旅に行ってきます」と笑顔で臨んだアジア・ウインターリーグ(台湾)では、1本塁打を含む打率.305の結果を残し「少し動くボールにも柔軟に対応することができました」と胸を張った。
謙虚な気持ちで力強く臨む21歳
今春のキャンプでの個別練習ではアシスタントスタッフ(打撃投手)の漆戸駿さんにストレートと変化球をランダムに投げてもらい、ボールを見極める練習を重ねた。「内角へ曲がるボールでカウントを稼がれるケースが多かったのですが(バットが)止まるようになりました。どんどん自分の思っていた打撃内容に近付いてきています」と手応えを感じ取っていた。
今季は開幕前に「左太腿直筋の筋損傷」で出遅れたが、4月12日のウエスタン・リーグ中日戦で実戦復帰を果たすと、2戦目に2安打、3戦目もランニング本塁打を含む3安打。復帰4試合で10打数6安打、打率.600と完全復活を猛アピールし、5月1日のロッテ戦(ほっともっと神戸)で今季初昇格した。
明石商時代の同級生で、同じ年にドラフト2位でロッテに入団した中森俊介投手は昨季、13試合に登板しプロ初勝利を含む3勝(2敗)を挙げた。鮮烈なデビューでは負けていないが「いや、もう抜かれています」と刺激を受ける。
自身のデビュー戦での偉業を「なんとも思わないですね」と言い切るのも、来田らしい。謙虚な気持ちで力強く、ボールに立ち向かう。
◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)