ヤクルトOBが指摘「得点力が激減した」 上昇モードも大穴…OBが挙げた意外なキーマン

ヤクルト・山崎晃大朗【写真:小池義弘】
ヤクルト・山崎晃大朗【写真:小池義弘】

キーマン塩見は5月に左膝前十字靭帯と半月板を損傷、今季の復帰が絶望的

 セ・リーグは首位の広島から最下位タイのヤクルト、中日まで、全6球団が5.5ゲーム差にひしめく大混戦となっている。上位争いから引き離されかけていたヤクルトも、6月は11勝6敗(勝率.647)と上昇モード。好調に転じた理由と優勝争いの鍵を、球団OBが分析する。

 スワローズの持ち味はなんといっても、強力打線にある。今季もリーグ最多の1試合平均3.60得点を誇り、リーグで2番目に多い1試合平均3.43失点の投手陣をカバーしている。

 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏は、「ヤクルトが5月に低迷したのは、リードオフマンの塩見(泰隆外野手)が大怪我(左膝前十字靭帯と半月板の損傷)を負って戦列を離れ、山田(哲人内野手)も故障で出場選手登録抹消。(ホセ・)オスナ(内野手)も打てなくなって(月間打率.180)、得点力が激減したからです」と指摘する。

 その上で「開幕から安定して打っているのは(ドミンゴ・)サンタナ(外野手)だけで……。村上(宗隆内野手)も本塁打こそ出ている(リーグトップの14)ものの、打率は依然低い(.232)。それでも山田、オスナが調子を上げ、打線がつながるようになったことが上昇気配の要因です」と見ている。

 投手陣では奥川恭伸投手が右肘痛から復活し、6月14日のオリックス戦で2年ぶりの1軍登板を果たし、5回1失点で3年ぶりの白星を挙げた。野口氏は「彼が徐々に投球数を増やし、登板間隔を縮めていければ楽しみ」と言いつつ、「投手陣で上がり目と言えばそれくらい」とも。やはり頼りは打線だと分析する。

塩見の代役となる選手「“いじられキャラ”で打てばチームが盛り上がる」

「“打撃は水物”と言われますが、ヤクルトの圧倒的な攻撃力はやはり他球団にとって脅威。もはやセ・リーグはヤクルトを含めて、どこが抜け出すか全く予想がつかない状況です」とボルテージを上げる。リーグ2連覇の達成から昨季は一転して5位に転落したヤクルトにも、2年ぶりの優勝の可能性は十分ある。

 では、混戦を抜け出す鍵は、どこにあるのだろうか。野口氏は前提として「ヤクルト打線では、村上、サンタナ、オスナ、山田の中軸4人ばかりが注目されますが、実は一番のキープレーヤーは塩見だと、僕は思っています。塩見が1番で出塁してこそ、チームは乗っていける。昨季5位に沈んだのは、塩見が故障がちで51試合出場にとどまったから。塩見がシーズンを通して活躍した2021、22年は優勝しているではないですか」と語る。

 その塩見の今季中の復帰は絶望的と見られている。ならば、代役を務められる選手はいないのか。「塩見が果たしてきた重要な役割の1つが、ムードメーカーです。いわゆる“いじられキャラ”ですが、あいつが活躍するとチームが盛り上がる」とした上で、「塩見と同等の成績を出すのは難しいと思いますが、塩見に似た、チームを盛り上げるキャラクターの持ち主という意味では、山崎晃太朗(外野手)がいます」。俊足巧打が持ち味の30歳の小兵(身長174センチ)の名前を挙げた。

 混戦になればなるほど、リーグ連覇の経験が生きてくるはず。ヤクルトは勝負の後半戦へ向けて戦力を整えながら、ムードメーカーの登場を待っているのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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