「本当はやっちゃいけない」…執念の85球 続投を“懇願”する22歳の男気「役割は果たせた」
オリックス・宮城大弥「改めて野球の楽しさに気づけたと思います」
■オリックス 3ー1 ソフトバンク(27日・京セラドーム)
感情が自然と出た、渾身のガッツポーズだった。オリックスの宮城大弥投手が27日、本拠地・京セラドームでのソフトバンク戦に先発登板し、5回85球2安打無失点の投球で今季3勝目を掴んだ。
「ピンチの場面でもしっかりと投げ切ることができた。自分の役割という部分は果たせたのかなと思います」
冷静に振り返る22歳左腕だが、マウンド上では闘志をむき出しにしていた。5月上旬に「左大胸筋の筋損傷」の診断を受けて戦線離脱。地道なリハビリ生活を経て、この日は50日ぶりの1軍マウンドに戻ってきた。
「1日でも早くチームの力になれるように(現実を)受け入れながら。最初は正直、面白くない日々でした。全く投げられないですし、キャッチボールや普通の練習ができない。投げられるようになってから、改めて野球の楽しさに気づけたと思います」
初回に3点の先取点をもらうと、スコアボードに「0」を並べ続けた。復帰戦は5回85球の力投。中嶋聡監督は「3回、4回……。4回かなと思っていた。(85球は)行っちゃいけないくらいの球数。本当はやっちゃいけないのかなと思いました」と奮闘に感謝した。
球数について宮城は「監督と話し合った結果でした。(患部は)全く今も問題ない。再発しないようにだけ」と前を向いた。ただ指揮官は「(宮城は)投げたくてしょうがないスタンスですので。そこはわかってましたけど、こっちがストップをかけないといけないところだと思います」と思いやる言葉を発信し続けた。
「ここで終わるような選手たちではない」…中嶋監督の思い
力いっぱいボールを投げられる喜びを表現したのは、4回のピンチを凌いだ場面だった。3点リードの4回2死一、二塁。この日70球目に選択したのはチェンジアップ。カウント3-2からの8球目を低めに投げ切り、甲斐を空振り三振に仕留めると、左拳を強く握って絶叫した。
「最後の最後で1番のベストボールというか……。その打席の中で良い球が(思ったところに)行って結果につながった。0と点を取られるでは雰囲気も違う。粘れてよかったなと思います」
サードを守っていた西野真弘内野手は「僕らは(宮城から)すごく気迫を感じました。実際の気持ちは本人にしかわからないですけど、ああいう姿を見ると『怪我してしまった』『(1軍を)離れていて悔しい』という気持ちを感じました。本当に気持ちがすごく伝わってきた」と“男気”を感じていた様子だった。
さらに「(宮城が)帰ってきてくれて1試合目で勝ち星がついて、僕らとしても良かった。宮城も苦しい思いをして、ようやく帰ってきてくれたので……。やっと帰ってきてくれて(患部を)ぶり返すのは本人も僕らも……みんなが嫌だと思っている。(首脳陣と宮城が続投を決め)それで勝ててよかった」と連敗を2で止めたエースに頭を下げた。
セカンドを守っていた安達了一兼任コーチも「久々の登板で、より一層の気持ちが入っていたと思います。(山本)由伸もそうでしたけど宮城にも同じことを感じることがあって、プライベートと同じような感じで、試合中も会話ができるんです」と“自然体”の左腕を絶賛した。その言葉通り、4回のピンチを凌いだ直後にはベンチで安達に向かって「セーフ」と両手を広げる姿も見られた。
連敗を止め、借金は4。指揮官は「ここで終わるような選手たちではない」と強調。必死に戦うプレーヤーたちを信じ続けるだけだ。
(真柴健 / Ken Mashiba)