西武はなぜ低迷? 陥った負のスパイラル…先発奮闘も歯車狂わせた“2.24&4.11”

西武・渡辺久信監督代行【写真:小林靖】
西武・渡辺久信監督代行【写真:小林靖】

西武は今季前半戦を借金32…チーム打率.206と打線が不振に喘いだ

 今季の西武は前評判の高かった投手陣、新外国人が2人加入した攻撃陣で捲土重来を期した。しかし、ペナントレース前半戦は27勝59敗1分けで最下位に沈んだ。ここでは前半戦の得点と失点の「移動平均」から、チームがどの時期にどのような波だったかを検証する。(数字、成績は7月21日現在)

「移動平均」とは、大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標。開幕3カード連続で勝ち越し、このまま波に乗るかと思われたが、4カード目のロッテ戦から極端な得点力不足に苛まれ、4月末までの17試合で7連敗、4連敗、4連敗を喫し、最下位に転落した。

 その後も5月、6月、7月にそれぞれ8連敗を喫するなど、一度負け始めると止まらない状況に陥った。チーム打率.206、OPS .555、1試合平均得点2.24はいずれも12球団ワースト。先制率40.2%も12球団ワーストで、なかなか有利な状況に持ち込めないのに加え、頼みの投手陣も救援投手が防御率4.11と打ち込まれ、先制しても34.3%で逆転負けを喫してしまう“負のスパイラル”が発生していた。

 次に、各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較。野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAAで検証した。先発の柱として期待された平良海馬と高橋光成がともに前半戦半ばで離脱してしまうアクシデントが発生したものの、先発投手陣の評価はリーグの中でもトップクラスである。

今井、隅田、武内ら先発陣は奮闘も…若手野手の台頭に期待

 特に今井達也の奪三振率10.11、奪空振り率(Whiff%)32%は12球団の規定投球回数以上の投手でトップの成績である。隅田知一郎やドラフト1位ルーキーの武内夏暉も高い奪三振能力を兼ね備えており、先発としての役割を十分に果たしている。特に武内はQS率81.8%、HQS64%とイニングイーターとしての能力も十分に発揮している。

 一方、シーズン当初は4番を任されていたヘスス・アギラー内野手は打率.204、OPS.575と期待に沿うことができず5月8日に2軍降格。フランチー・コルデロ外野手も打率.129、OPS.351と結果を残せないままである。チームトップの7本塁打を放った中村剛也内野手も7月11日に登録抹消されたため、前半戦終了時に登録された野手で最多本塁打は岸潤一郎の外野手の5本となっている。

 課題噴出の西武。後半戦は救援投手陣の再構築、西川愛也外野手、山村崇嘉内野手、蛭間拓哉外野手、渡部健人内野手、奥村光一外野手、長谷川信哉外野手といった若手野手の台頭に期待したい。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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