応援団に異例の「待って!」…劇的弾に涙→場内爆笑 少年に託した夢、ラオウ劇場の真相
オリックス・杉本裕太郎“らしさ”全開の爆笑お立ち台
■オリックス 1ー0 ロッテ(23日・京セラドーム)
起死回生の一撃から、お立ち台まで“らしさ”全開のラオウ劇場だった。オリックスの杉本裕太郎外野手が23日のロッテ戦(京セラドーム)で、0-0の9回2死カウント3-2から右中間にサヨナラ本塁打を描いた。今季8号で試合を決めると、本塁を踏む際には歓喜の「昇天ポーズ」を決めた。
劇的ドラマを最後まで描き切った。仲間からのウォーターシャワーを浴びた直後、お立ち台に登場すると、腹部が“尖って”いた。インタビュアーからファンへのコメントを求められ「2割ちょいしか打率がないですけど、最後まで僕のことを応援してくれてありがとうございました!」とジョークを炸裂。最後には「あと1つ……」とマイクを受け取った。
太鼓を鳴らし始めた応援団に「待って!」と一時ストップを“懇願”。胸元のボタンを外し「私事なんですけど……。こういう本が出ていますので、夏休みの読書感想文におすすめです!」と、自身の自叙伝を紹介して場内の笑いを誘った。
ラオウ劇場は終わらない。右翼席へ挨拶に向かった際には、記念のホームランボールをスタンドに投げ込み、打席で装着していた打撃手袋をスタンドのファンにプレゼント。最後には、お立ち台で紹介したばかりの本である「僕がラオウになる日まで」を、フィールドシート(大商大シート)で観戦していた少年に手渡しでプレゼントした。
背番号99「SUGIMOTO」のユニホームを着て応援していた少年は、歓喜のあまり“呆然”。ファンに真っすぐに感謝の気持ちを伝え、夢を与えるまでがラオウの使命だった。
「自分にサインをもらいに来てくれることって、本当に幸せなことですからね」
超異例のお立ち台は、笑いあり涙ありで終演。ここ数年の変化があるといい「ファンの方がたくさん来てくださっていて、本当にうれしいです。京セラドームにも、ほっともっと神戸にも、ビジターの球場やキャンプ地にも応援に来てくださっています。今はサインを書き始めると『ユニバのアトラクション』くらい、行列ができます」と喜んだことがある。
「僕はプロ入りから最初の5年ほどはあまり1軍の試合に出ていなくて……。道を歩いても、誰も話しかけてくれなかった時期もありました。ずっと2軍生活。だから、サインを求められることも、他の選手と比べたら少なかったです。他の選手がサインを求められるシーンを見て、素直に『いいなぁ……』と羨ましがっていました。もし、自分がそういう存在になれたら、喜んでもらえるように動こうと考えていましたね」
杉本は2015年にドラフト10位でオリックスに入団。2021年に32本塁打を放ち、本塁打王に輝くなど、今季でプロ9年目を迎えている。「自分にサインをもらいに来てくれることって、本当に幸せなことですからね。プロアスリートとしての活躍が認められたからこその言葉ですから。だから、嬉しいですよ。練習の途中だったら困りますけど(笑)。タイミングさえ合えば、僕は心から喜びます」。率直な言葉が、33歳になった今も自身を突き動かす。
「こんな僕でも、新人の頃からずっと見てくださっているファンもいます。まだまだ売れてもいない1年目、2年目くらいのときから“追っかけ”をしてくださっていたり……。神戸サブ球場で、応援してくれよったファンの方の顔は『今でも覚えとるよ』と伝えたいです。本当にありがたいです」
フラッシュライトを夢見て、懸命にバットを振り続けたから今がある。愚直に、時に悔しさを胸に――。一筋の光を掴む。ドラフト10位からの逆襲は、まだまだページが続いていく。