愛妻のために…“王子の王子”が磨く武器 高島泰都が実感した「通用しない世界」
オリックス・高島泰都がこだわった「質のいいストレート」
レベルの高さを知ったからこそ、さらに自分を磨く。8日の西武戦(京セラドーム)でプロ初勝利を挙げたオリックスのドラフト5位・高島泰都投手が、ストレートの質を向上させ1軍定着を目指している。「真っすぐを低めに集めたら(打者は)低めの変化球も振ってくれます。その真っすぐを常に投げられるようにしたいです」。7月中旬に大阪・舞洲の球団施設で話した言葉通りの投球で、初白星を手繰り寄せた。
象徴的な場面は1-0で迎えた5回だった。1死から外崎修汰内野手、アンソニー・ガルシア外野手を連続四球で歩かせ1死一、二塁。野村大樹内野手への3球目、外角低めの直球で遊ゴロ併殺に仕留め、ピンチを断った。
「攻めた結果の四球だったので、気持ちを切り替えたところでしっかりとゴロで併殺を取れたのがすごくよかったと思います」と胸を張った。「ちょっとボール球だった」と振り返る低めの直球だったが、初球の147キロ直球は外角低めへのボール、2球目は139キロのチェンジアップを外角低めに決めストライクを取っていたことで、直球がボール球になっても低めで打ち取るという計算通りの投球をすることができた。
高島にとっての武器は、チェンジアップ。空振りも取れてカウントも稼ぎ、ゴロにも仕留められる伝家の宝刀。それを生かすのが「質のいいストレート」というわけだ。「オープン戦ではしっかりと低めに集め、カウントが取れて勝負できる球だった」。オープン戦は4試合で6イニング、被安打3、無四球で防御率0.00と安定し、開幕1軍に抜擢された。
「1勝の重みは初先発の時に知ったので、すごくうれしいです」
開幕直後は中継ぎで起用されることが多く、疲れから中盤戦以降はフォームが崩れ、ストレートの球威も落ちてしまったという。4度目の登録抹消となった6月末から約1か月間、先発の調整をしたことで復調。「変化球もそうですが、直球の精度も大事になります。制球力に加え強さやキレがなければ1軍では通用しません。僕の真っすぐはそんなに回転数はありませんし、きれいにホップしているわけでもないので、動かして組み立てることができれば楽になります」とレベルを高めてきた。
いつもクールで喜怒哀楽をあまり表すことの少ない高島の表情は、初勝利後も緩まなかった。初先発となった4月10日の楽天戦(京セラドーム)、2-1で迎えた5回に4長短打を許し、3失点。初勝利目前にマウンドを降りたことが、ずっと脳裏にあった。
「1勝の重みは初先発の時に知ったので、すごくうれしいです。でも、しっかりと次に向けてやっていかなければ通用しない世界だと思うので、そこはしっかりと切り替えたい」。1軍で戦力であり続け、社会人時代から支えてくれた愛妻のためにも、慢心はない。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)