セ首位も…広島の「順位は不思議」 専門家が評価、下馬評覆した新井監督の“手腕”

広島・新井貴浩監督【写真:小林靖】
広島・新井貴浩監督【写真:小林靖】

広島は今季中日相手に7勝11敗1分け…セで唯一負け越している

 首位・巨人と0.5ゲーム差の2位につけている広島。就任2年目の新井貴浩監督の下、チーム6年ぶりのリーグ優勝も現実味を帯びている。ただ、29日の中日戦(バンテリンドーム)には1-5で敗れた。今季中日には7勝11敗1分。特にバンテリンドームでは3勝7敗1分と相性が悪い。中日とは6試合残っており(バンテリンドームで3試合)、優勝への大きな関門と言えそうだ。

 広島がセ・リーグ球団で今季負け越しているのは、中日だけ(巨人とは8勝8敗3分のタイ)。順位から言えば、圧倒していてもおかしくない相手に思える。なぜここまでやられるのだろうか。広島、オリックス、ソフトバンクなどで打撃コーチを歴任し、名伯楽と呼ばれた野球評論家・新井宏昌氏は次のように語る。

「広島と中日はもともと似たタイプのチームです。投手陣が強力で、得点力は高くない。広島としては持ち味を出しにくいかもしれません。競り合いになれば中日は勝ちパターンのリリーフ陣を投入してくるので、なおさら点が取れない。特にバンテリンドームでは中日投手陣が自信を持って投げ込んできて、広島は“守り負け”している印象です」

 広島は今季、リーグトップのチーム防御率2.27を誇る。中日は同4位の2.83にとどまっているものの、もともとリーグ随一の投手陣を誇っている。一方、チーム総得点は広島が335でリーグ5位、中日は311で同ワーストと、よく似ている。

 広島は今季中日戦19試合で33得点(平均約1.7点)しか取れていない。象徴的だったのは29日の試合。2点を追う5回の攻撃で、6番・堂林翔太内野手の適時二塁打で1点差に詰め寄った直後、7番・菊池涼介内野手がNPB歴代5位の通算350犠打を決めて1死三塁とした。続く矢野雅哉内野手がカウント1-1からスクイズを敢行したが、ファウルとなった。結局投ゴロに倒れ、追いつけなかったことが最終的に勝敗を分けた。

新井貴浩監督の手腕を評価「失敗を攻めず、思い切ったプレーを求めている」

 新井氏は「新井貴浩監督は、あまり得点力が高くないことを前提に、確実に1点を取る作戦を取ります。シーズンを通して、こういう采配がよく当たって試合をものにしてきました」と説明。「この日に関して言えば、矢野のスクイズ失敗が痛かった。外角のスライダーのイメージが強かったのか、内角高めのストレートをとらえることができませんでした」と評した。

 先発は大瀬良大地投手が防御率1.38、森下暢仁投手が同1.65、床田寛樹投手が同1.81と盤石。首位の巨人、3位・阪神、4位DeNAを含めたシーズン最終盤の優勝争いについて、新井氏は「打線がどれだけ点を取って、投手を助けられるか。広島は左打者に好成績の選手が多い。小園(海斗内野手)、坂倉(将吾捕手)、秋山(翔吾外野手)、矢野、野間(峻祥外野手)らレギュラー級の左打者が活躍しないと、点を取るのは難しいと思います」とキーポイントを挙げた。

 もっとも、開幕前の広島の下馬評は決して高くなかった。新井氏も「純粋に戦力を他球団と比較すると、広島が今この位置にいることが不思議な気がします」と本音を明かす。躍進の要因は新井監督の選手起用、思い切った作戦にありそうだ。新井氏は「新井監督は選手の失敗を責めず、思い切ってプレーすることを求めている。メンバーを頻繁に入れ替えながら“君のいい所を見せてくれ”と期待感を持って試合に送り出している雰囲気が伝わってきます」と語る。

 新井監督のポジティブな雰囲気づくりが功を奏し、周囲の予想を超える進撃を続けてきた広島。最終的に優勝へこぎつけることができるだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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