激化する新人王争い “急追”するライバル…足踏み続くドラ1に指揮官が見せた親心

西武・武内夏暉【写真:荒川祐史】
西武・武内夏暉【写真:荒川祐史】

西武・武内はデビューから5連勝も…最近4試合で白星なし

■西武 6ー5 日本ハム(1日・ベルーナドーム)

 西武は1日の日本ハム戦(ベルーナドーム)に6-5で逆転サヨナラ勝ち。2点ビハインドの9回に3点を奪った。最後は元山飛優内野手の中越え2点二塁打で試合を決めた。一方で、先発したドラフト1位ルーキー・武内夏暉投手は5回/3を3失点(自責1)で降板し、4試合連続白星なし。シーズン序盤は圧倒的優位と見られていた新人王争いだが、ここにきて激しさを増している。

 この日の武内は初回、思わぬ形で2点を許した。先頭の水谷瞬外野手を四球で歩かせ、さらに一塁牽制球を「ボーク」と判定され、二塁へ進めてしまう。牽制を得意とする武内だけに“上手の手から水が漏れた”格好だ。

 この後、一塁手・元山の失策、炭谷銀仁朗捕手のパスボールも絡んでピンチを広げ、フランミル・レイエス外野手と上川畑大悟内野手に適時打を許した。2回以降は立ち直るも、6回にはレイエスに17号ソロをバックスクリーン左に放り込まれた。

 武内自身は「初回に自らのミスで、相手に主導権を握らせてしまったことは反省点です」と頭を垂れた。一方、渡辺久信監督代行は「牽制に関しては紙一重。彼は牽制のうまい投手で、走者にプレッシャーをかけている。ボークの判定は審判の主観にもよる。これで牽制ができなくなるようなことはないと思いますよ」と前向きに評した。

 5回1/3を投げ3失点を喫したが、初回の失点が失策絡みだったため自責点は1。今季成績は17試合7勝5敗、防御率2.34となった。最速154キロを誇り変化球も多彩で、制球もピカイチ。デビューから7月4日のソフトバンク戦まで無傷の5連勝を飾り、防御率1.10をマークしていた時には、新人王レースは独走状態に見えた。しかし、7月12日の楽天戦でのプロ初黒星以降は2勝5敗。最近4試合は白星なし(0勝3敗)と足踏みが続いている。

“猛追”する日本ハムの2年目・金村&オリックスのドラ6・古田島

“猛追”してきたのが、日本ハム2年目の金村尚真投手だ。初めて支配下登録されてから5年以内で、前年までの通算投球回数が30イニング以内の投手には新人王資格がある。金村はルーキーイヤーの昨年も4試合2勝1敗の数字を残したが、投球回数は25イニングだった。今季開幕当初はセットアッパーで、5月8日のソフトバンク戦で先発に配置転換されてからも安定した投球を披露。25試合6勝5敗6ホールド、防御率2.38で武内と拮抗している。

 オリックスのドラフト6位ルーキー・古田島成龍投手もリリーフで42試合に登板。2勝1敗21ホールド、防御率0.92と抜群の数字残している。

 渡辺監督代行は「俺は1年目に投げ過ぎてしまったから、新人王を取れなかったんだよね」と自身のプロ1年目の1984年を振り返る。ドラフト1位で群馬・前橋工高から入団し、15試合(2先発)で1勝1敗、防御率3.93。投球回数が52回2/3に上り、この時点で新人王資格を失った。翌1985年に先発・リリーフ兼任で43試合(15先発)8勝8敗11セーブ、防御率3.20と活躍しただけに、「資格があれば取れていたかもしれないね」との思いがある。

 一方で「1年目にあれだけ投げさせてもらえたからこそ、成長できた面もある。新人王を獲得して、結局その年だけの活躍に終わってしまうケースもあるよね」とも。渡辺監督代行は3年目に早くも16勝6敗で最多勝を獲得し、リーグを代表する投手へと着実にレベルを上げていった。

「新人王を取れるかどうかが、その後の野球人生に影響を与えるかというと、そんなことはないと思う。それでも取れるなら、ぜひ取らせたいよね」と武内に親心をのぞかせる渡辺監督代行。シーズン最終盤、新人王争いはどんな展開を見せるだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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