日本文化をリスペクトの“謝罪” 死球を当て「ゴメン」…オリ助っ人、打者に寄り添った理由
オリックス・エスピノーザが死球で“謝罪”…「とても心配でした」
リスペクトするからこそ、フェアプレーの精神を表現する。オリックスのアンダーソン・エスピノーザ投手が、死球を当ててしまった打者に対し「謝罪」する日本野球のスタイルを貫いている。
「日本の野球、日本の選手をリスペクトする気持ちがありますから、純粋に当ててしまったことの謝罪をしたかったのです。とくに彼については、とても心配でしたから」
今でも申し訳なさそうに眉を寄せてエスピノーザが振り返ったのは、8月14日の楽天戦(京セラドーム)でのアクシデントだった。1-4で迎えた7回2死一塁で、エスピノーザが投じた98球目は、打者・村林一輝内野手の顔面付近へ。ボールを避けきれず倒れ込んだ村林を見たエスピノーザはマウンドを降り、本塁付近へ心配そうな表情で歩み寄った。幸い、ボールは左肘付近を保護するエルボーガードに当たり、頭部直撃ではなかった。
「あまりコントロールに自信が持てない日で、当たった場所が心配だったので謝罪をしたかったんです。どこに当たったのか確認をするために、向かいました。(エルボー)ガードだったので自分としてはすごくホッとして、気持ちが落ち着きました」
立ち上がった村林との間で会話があったように見えたことについて、エスピノーザは「スペイン語はわからないと思って、自分の知っている『ゴメンナサイ』という言葉を使いました。彼は『大丈夫』と言ってくれました」と明かす。メジャー経験のあるエスピノーザだが、死球を当てた打者に対して謝罪したことはなかった。メジャーでは、死球を与えた投手が謝罪すれば故意と受け取られ、全力プレーの結果としての死球は謝罪しないと説明し「(メジャーでは)謝る、というものがないので、そんな経験はありません」と振り返った。
ファンから「すごくいい行動だった」…エスピノーザは“謝罪”を「大切だと思っています」
しかし、今季に日本で与えた他の4死球でも、エスピノーザは打者に謝罪の意を表してきた。「うまく避けていただいたので(村林の時のような)謝罪はしていませんが。僕は今、日本にいますから(謝罪するという)スタイルでいます。相手チームをリスペクトする意味でも、大切だと思っています」。柔軟な対応力がある。
日本球界では、死球を巡るプレーが注目を集め、ファンの間で謝罪の意の表し方についてSNS上で様々な意見があった。それだけに、エスピノーザが見せた心からの謝罪には、ファンの間で称賛の声が相次いだ。
「(死球を巡る出来事は)知らなかったのですが、ファンの方々からメッセージで『すごくいい行動だった』と言ってもらえて、学ぶことも多かった。これからもそのスタイルでやっていきます」
ベネズエラの首都・カラカス出身。2014年にレッドソックスと契約し1Aで実績を積み、2016年にパドレスに移籍した。翌年以降、2度のトミー・ジョン(TJ)手術を経験し、コロナ禍による1年を含めて4年間、実戦から遠ざかる辛い経験も積んできた。だからこそ、異国の地の「野球」を受け入れる気持ちが強いのだった。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)