西武・甲斐野の“予言”が「全然違った」 同期対決実現も…ハム・水谷が明かした舞台裏

西武・甲斐野央(左)と日本ハム・水谷瞬【写真:小池義弘】
西武・甲斐野央(左)と日本ハム・水谷瞬【写真:小池義弘】

鷹2018年ドラフト1位の甲斐野と同5位の水谷が初対戦も初球が死球に

 18.44メートル先にいる同期の存在を噛みしめた。1日にベルーナドームで行われた西武-ソフトバンク戦。7回から3番手でマウンドに上がった甲斐野央投手と、1死から打席に立った水谷瞬外野手は、2018年ドラフトでともにソフトバンクに入団した仲。結果は、初球のスライダーが肘付近に当たる死球だったが、水谷が笑顔で舞台裏を明かした。

「やっぱり意識していないことはないですし、こうやって公式戦で対戦できたのはうれしいことでした。でも初戦(8月30日)の帰りにたまたま会ってちょっと喋ったら『真っすぐいくわ』って言われて。なのに、全然違った。真っすぐじゃなくてスライダーやん! えっ、て思って当たっちゃって……」

 高卒と大卒、さらに投手と野手。違いはあれど、強い絆で結ばれている。「僕は高校生からプロの世界に入って、彼はドラフト1位で入って侍ジャパンにも選ばれて、僕から見たら本当に格好いい存在でした。それでもフレンドリーに喋ってくれて気を遣わない先輩の1人。ほかのホークスから出た人とはまた違った感情みたいなのはやはりありますね」と率直な思いを口にする。

 東洋大から入団した甲斐野はルーキーイヤーから65試合に登板。同年秋には「プレミア12」に選出され、日本代表の優勝に貢献した。その後は故障などもあったが、昨年は45試合で防御率2.52。山川穂高内野手の人的補償で、今季から西武のユニホームに袖を通す。

激動の6年目も終盤「どんどん思い切ったプレーをしていきたい」

 一方の水谷はソフトバンク時代の5年間は1軍出場なし。現役ドラフトで日本ハムに移籍した今季、交流戦首位打者に輝くなど大きく花開いた。1軍での出場機会が増えることでかつての仲間との対戦は増えているが、甲斐野はやはり、特別な存在なのだ。ちなみに「(2月の)沖縄で泉投手(同年ドラフト6位、トレードで今季から巨人へ移籍)に当てられているんです。同期入団には当てられるんですかね」と思わぬ悩みも口にした。

 シーズンも終盤に差し掛かった。チームは現在2位につけるが、もちろんヒリヒリするような順位争いも、水谷にとっては初めての経験。1番打者を任されることも多く、打線を勢いづける役割が求められる。

「1戦1戦落とせない試合が続いている中で、自分もなんとか貢献したい気持ちもありますけど、そこで大事にというかミスしないプレースタイルでやっていってしまってはなかなかいいプレーも出てこないと思う。ダメで元々という気持ちで今年1年やっているので、どんどん思い切ったプレーをしていきたいです」

 激動のプロ6年目。かつての仲間との再会も経て、水谷は経験を積み重ねる。そして再び甲斐野と対峙する日へ——。「1人のいい投手ということを考えながら対戦して、その頭の片隅で特別な気持ちを置いておけたらいいのかな。次は打ちたいなと思います」。真剣勝負の中に、美しい物語がある。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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