9回に衝撃9得点…巨人に訪れた“決め手” 専門家が指摘した大きな1勝「分水嶺かも」

巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】
巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】

元広島コーチ、守護神・栗林の乱調は「ちょっと考えられません」

 セ・リーグ首位の巨人は10日から12日まで、敵地マツダスタジアムで行われた2位・広島との3連戦に3連勝。ゲーム差を「4」に広げ、4年ぶりの優勝に大きく近づいた。特に衝撃的だったのは、2点ビハインドの9回に一挙9得点で大逆転した11日の2戦目。オリックス、広島、ソフトバンクなどで名打撃コーチとして鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は「仮にこのまま巨人が今季優勝し、広島がV逸するとすれば、あの試合がシーズンの分水嶺だったかもしれない」と指摘する。

「巨人にとっては9分9厘負けていた展開。棚からぼた餅、ラッキーとしか言いようがない。ものすごく大きな白星でした」と新井氏は見る。

 0-2とリードされて9回の攻撃を迎え、マウンドには広島の守護神で、登板前の時点で今季防御率0.88を誇っていた栗林良吏投手が上がった。ところが、先頭の代打・中山礼都内野手が1球もストライクが来ないまま四球で出塁すると、続く丸佳浩外野手も四球。坂本勇人内野手が左前打でつないで無死満塁とし、吉川尚輝内野手が押し出しとなる死球を受けて、あっという間に1点差となった。

 岡本和真内野手の左前適時打で同点、続くココ・モンテス内野手も押し出し四球で逆転すると、栗林は1死も取れずに降板。結局6失点となり、今季防御率は一気に1.94に跳ね上がった。新井氏は「栗林としては信じられないほどの不出来でした。プレッシャーがかかったのでしょうが、四球の後にホームランを打たれるならまだしも、打者6人に4四死球とは、ちょっと考えられません」と言う。想定外の事態に、急きょリリーフした森浦大輔投手、大道温貴投手が巨人の勢いを止められず、ズルズル失点を重ねた。

「クローザーで負けた広島は、普通に負けるよりもショックが大きかった。単なる1敗では済まない敗戦です。今後も栗林に9回を任せるのは変わらないでしょうが、これだけやられると、今後マウンドに上がる時には一抹の不安が付きまとうことになるでしょう」と新井氏。「今季のセ・リーグは、どのチームにも決め手がないまま来た感じですが、この試合が1つのポイントになるかもしれません」と強調した。

 しかも大逆転で巨人に傾いた流れは、翌12日の3戦目も変わらなかった。3回の巨人の先制点は、無死二塁で送りバントを処理した広島先発・床田寛樹投手が一塁へ悪送球して転がり込んだ。

 一方、巨人の阿部慎之助監督は3-0とリードして迎えた8回の守りで、3番手のアルベルト・バルドナード投手が2死一、二塁のピンチに末包昇大外野手を迎えると、守護神の大勢投手を投入。今季初の“回またぎ”となった大勢は、打者4人をパーフェクトに抑えて期待に応えた。

「大勢の早めの投入は、阿部監督から選手たちへ“ここからがシーズンの勝負所だ”というメッセージになったと思います。2戦目を取れたからこその思い切った采配でした」と新井氏。9・11は“混セ”決着をつける大一番だったのか……。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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