西武“最強助っ人”も絶賛「来年スターになる」 2軍で無双…育成出身21歳に高まる期待
2021年育成ドラ3…西武・菅井信也は今年6月に支配下昇格→1軍で7登板
今季最下位が確定している西武だが、近い将来を担う若手たちが着実に芽吹いている。高卒3年目の21歳左腕・菅井信也投手も、その1人だ。育成選手として入団し、今年6月に支配下登録。早速1軍で7試合1勝2敗、防御率6.16の実績を作った。現在は2軍で調整中だが、今月17日のイースタン・リーグ巨人戦(ベルーナドーム)ではプロ初完投を完封で飾り、俄然注目度が高まっている。
この試合で菅井は、最速148キロを計測したストレートにチェンジアップ、スライダー、カーブをまじえ、巨人打線に付け入る隙を与えなかった。112球を投げ、2安打13奪三振無四死球で完封勝利。西武黄金期の主砲で、今年7月に球団スペシャルアドバイザーに就任したオレステス・デストラーデ氏は「チェンジアップが素晴らしかった。僕は彼のことを『スガイ』ではなく『スーパー・ガイ』と呼んでいるんだよ。彼は来年スターになるよ」と興奮気味にまくしたてた。
菅井本人は「過去に1度、ファームで完封を狙えた試合があったのですが、8回にホームランを打たれてできませんでした。シーズン終盤に完封できて、よかったです」と、はにかんだ。5月14日のイースタン・リーグのロッテ戦で7回まで1安打無四死球無失点の快投を演じながら、1点リードの8回1死から愛斗外野手に同点ソロを浴び、白星も逃していた。
左腕はその後、6月3日に支配下選手登録され、同6日のヤクルト戦でプロ初登板。敗戦投手になったものの5回を2失点にまとめた。2度目の先発となった7月15日のオリックス戦で、7回を3安打無失点。プロ初勝利を挙げた。8月5日に出場選手登録を抹消されて以降はファームでの調整が続いているが、期待感は増すばかりだ。
同期の羽田慎之介、黒田将矢と「近未来の先発3本柱」の期待
西口文也ファーム監督は、同い年で2021年ドラフト同期の菅井、羽田(はだ)慎之介投手、黒田将矢投手の3人に、「近未来の先発3本柱」として期待を寄せている。羽田が支配下のドラフト4位、黒田が同5位、菅井は育成ドラフト3位での入団。菅井は「ライオンズはピッチャーがいいので、プロ入り当初は支配下になれるどうか不安でした。結果を出すしかないという感じでした」と振り返る。
3人の中で最初に1軍でチャンスを得たのは、身長191センチの大型左腕・羽田だった。5月14日の日本ハム戦でプロ初登板し、捕逸で1点を失ったものの1イニングを1安打自責0。最速155キロの剛球で強烈な印象を残した。そして、育成契約から這い上がった菅井が続き、黒田は1軍登板がまだない。
西武で2022年まで15年間、主にリリーバーとして活躍した武隈祥太氏(球団バイオメカニクス担当兼ファームコンディショニングチェック担当)は「羽田、黒田、菅井の中で、一番負けん気が強いのは菅井だと思います」と語る。技術面では「スピードガン表示が142~143キロであっても、みんなが振り遅れるような切れのあるストレートを投げられることが持ち味」と評価。「1軍で活躍するには、完封した試合のピッチングが最低条件でしょう。2軍では、あれくらい圧倒しないといけない。まだスタート地点ですよ」と鼓舞する。
「三振を取って勝てるピッチャーになりたい」と語る菅井が、山形・山本学園高(現・惺山高)時代から目標にしているのは、西武OBでもあるアストロズ・菊池雄星投手。「シーズンを通して投げられる体というものが出来ていなかったので、もう少し、しっかり体づくりをして来年を迎えたいと思っています」と課題を自覚している。
菅井にとってチーム内のライバルは、同期の2人だけではない。今月12日の楽天戦では、神奈川・横浜高出身のドラフト3位ルーキー・杉山遥希投手がプロ初登板。先発して3回6失点で敗戦投手となったが、大物感を存分に漂わせた。同世代の若手による競争が、チーム力を押し上げていく。
(倉林知子 / Tomoko Kurabayashi)