過ごした“雌伏の時” 育成時代は「痛い目に遭わないと」…大里昂生が続ける成長

オリックス・大里昂生【写真:北野正樹】
オリックス・大里昂生【写真:北野正樹】

育成出身のオリックス・大里昂生、躍動の理由は「頭の中で整理しながら」

 災い転じて福となす。オリックス・大里昂生内野手は、大怪我で戦列離脱を余儀なくされた期間にプロで通用する打撃を磨き、1軍での活躍に結び付けた。「自分と向き合う時間が十分ありましたから、何がダメでどこを伸ばせばいいのか、見つめ直すことができました」。1年以上前にあった雌伏の時を、昨日のことのように振り返った。

 大里は盛岡大付高、東北福祉大から2021年育成ドラフト3位でオリックスに入団。巧みなバットコントロールと俊足が評価され、プロ2年目の開幕直後(4月7日)に支配下選手登録をつかんだ。4月12日の楽天戦で初出場。1軍を経験した後、ファームで実戦経験を積んでいたが、5月5日のウエスタン・リーグ阪神戦(甲子園)の守備で左肩を強打。「関節亜脱臼」で2か月半、戦列を離れた。「求められているものが各々あるので、フォームの改善などを考えていました」と、この期間の過ごし方を説明した。

 指導者のアドバイスも身に染みた。1軍での初打席。カウント1-0から楽天・伊藤茉央投手の144キロの直球を強振したが遊飛に終わってしまった。その後、出場選手登録を抹消された大里に、波留敏夫育成チーフコーチは「1軍の投手は1球か2球しか失投しないけれど、いいバッターはそれを一発で仕留める。そのあたりがまだ弱いし、正しい打ち方をしないと苦労するよ」と声を掛けたという。

 3年目の今季、7月2日に1軍昇格を果たすと、6日の日本ハム戦(ほっともっと神戸)で「2番・二塁」で先発出場し、3打数2安打1打点で勝利に貢献。その後も打撃不振のチームに勢いをつける活躍をみせた。

 大里について波留コーチは「育成の選手はプロの世界に立ったことがないので、痛い目に遭わないと自分を変えようとはしません。そんなに教えることはありませんが、アイツも自分で変わろうと思ってさらに練習するようになったんじゃないですか」と、1軍の経験が成長を促したとみている。2軍でも大里を指導してきた高橋信二打撃コーチは「元々、当てるのは上手かったですが、力強い打球を打てるようになりました。打席も増えてボールの見極めもよくなりましたね」と成長ぶりに目を細める。

「1年目からやることは変わりません。与えられたポジションや自分が何を求められているのかを、ちゃんと自分の頭の中で整理しながらプレーをしている感じです。集中しているから、たまたまいい結果になっているだけです」と、いつも控え目に語る大里だが、プロの“壁”を知り、指導者の助言を生かしたことが活躍に結びついた。

「少しでも多く1軍にいることが目標です。この世界にいる限りは、上を目指したい。調子の波はあるので、ダメなときにいかにそれを少なくするかです」。堅実な守備と確実性の高い打撃で、夢を追う。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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