まさかの登板指令に全員が「え?」 プロ初ホールドの裏で…ブルペンを包んだ“驚き”
ロッテ菊地は2年目の今季、中継ぎに配転…飛躍への足掛かりを築いた
ロッテ・菊地吏玖投手の2年目は、試行錯誤の日々から始まった。「中継ぎってどんなものなんだろうというところからスタートしました」。学生時代は主に先発。中継ぎへの配置転換が決まったのは昨季オフの自主トレ期間だったという。
「1月頃に読んだ吉井(理人監督)さんのインタビュー記事で『菊地は来シーズン中継ぎです』と書かれていて『俺、中継ぎなんだ』と。フェニックス・リーグと台湾ウインターリーグでは中継ぎで投げていたので『もしかしたら中継ぎだろうなあ』くらいに思ってはいましたが、正式に知ったのはインタビュー記事です」
今季はファームのスタートとなったが、5月4日に1軍初昇格した。その期間に益田直也、澤村拓一両投手ら長年ブルペンを支える先輩の動きを学び、試合の日はどのようにしてコンディションを整えていくか、中継ぎの準備の仕方を徐々に身につけていったという。
6月1日に登録抹消されたものの、再昇格後の8月は9登板で防御率0.90。9月も計8回1/3を1失点の好成績を残すなど、シーズン終了まで1軍に帯同した。好転のきっかけは約2か月間のファームでの調整にあったのか。
「監督から変化球を教わっていたので、それを自分のものにしようとファームで頑張っていました。あとは、それまではいろいろ考えながら投げていたんですけど、結局考えすぎていたということに気づきました。バッターを抑えることだけに集中して投げてみたら、8月に1軍に上がる直前の4試合くらいでかなり良くなってきて。その辺りからうまくハマったような感じがします」
日本ハムとのCSでも登板「雰囲気が全然違いました」
マウンドでの考え方をシンプルにしたことにより、夏場以降1軍で好投。プロ初勝利、初ホールド、初セーブを記録した。中でも初ホールドを挙げた、8月7日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)でのブルペンが最も印象に残っているそうだ。
「1軍に上がってすぐの時期で『え、俺こんな場面でいくの?』って。まだ僅差の場面で投げるような選手ではないと認識していましたし、先輩方が準備していたんです。6回に投げていた横山(陸人)が抑えて帰ってくるときに電話がかかってきて、僕の名前が呼ばれて。ブルペン全員が『え?』って言いました。僕はその時、準備していたピッチャーに渡す水を注いでたんですよ。突然だったので緊張している暇もありませんでした」
レギュラーシーズン後は、日本ハムとの「パーソル CS パ ファーストステージ」も経験。第3戦で3点ビハインドの8回2死一塁から登板した場面を「レギュラーシーズンと雰囲気が全然違いました」と振り返る。
「セットポジションに入っていても止まれない。一塁にランナーがいるので、走られないようにタイミングを変えたかったんですけど、体が勝手に動くので投げるしかないみたいな。変な感覚でした」。独特の空気を味わったが、郡司裕也捕手をフォークで追い込み、最後は外角ストレートで見逃し三振に。持ち味を存分に発揮した。
菊地が今季投じたボールのうち、約3割を占めたのがフォークだ。奪三振率10.13を記録した要因の1つにもなっている。しかし、「フォークも一軍に定着するきっかけになったボールなので、大事にはしてますけど……」。それ以上に磨きをかけたいものがある。
「やっぱり真っすぐですね。真っすぐがあまり良くないと、フォークも生きないので。今年もファウルを取ったり詰まらせたりはできましたが、もっと空振りを奪えたり、スピードや圧があったりすればバッターを惑わすことができると思います。球速、回転数、ホップ成分とか、数字の部分を常に意識しながら練習しています」。来季目標は「50試合登板、防御率0点台」とキッパリ。勝ちパターンの一角としてチームに貢献することを誓った。
(「パ・リーグインサイト」高橋優奈)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)