打率.198も…広島・田村は「丸になれる」 元コーチの提言、21歳に「今必要なこと」
今季開幕前の3月には侍ジャパンに抜擢された田村俊介外野手
今季は9月上旬まで激しい優勝争いを演じながら、まさかの大失速で結局4位に終わり、クライマックスシリーズ(CS)進出さえ逃した広島。来季、2016~18年のリーグ3連覇以来7年ぶりのV奪回を果たすには、若手の台頭が不可欠だ。“元コーチ”はイチ推しの期待株に、高卒4年目を迎える左打ちの大砲候補、田村俊介外野手の名前を挙げた。
「田村はパンチ力があり、インコースの球を打つのがうまい。うまく育てば丸(佳浩外野手、巨人)のような選手になると思います」。こう評するのは、現役時代に通算2038安打を放ち、2013年から3年間広島の1軍打撃コーチを務めた新井宏昌氏だ。
田村は愛知・愛工大名電高から2021年ドラフト4位で広島入りし、2年目の昨年には早々と開幕1軍入り。10試合出場で打率.364(22打数8安打)の好成績を残し、日本代表「侍ジャパン」の井端弘和監督の目にも留まって、今季開幕前の3月には強化試合「日本vs欧州代表」のメンバーに抜擢された。ただ、華々しいブレークを期待されたレギュラーシーズンでは、37試合出場で打率.198(101打数20安打)にとどまった。
新井氏が懸念するのは、田村が今オフ、長打力アップのために、重心がグリップ寄りのミドルバランスのバットから、先端に重心があるトップバランスへ変える意向を示していることだ。「彼に今必要なのは、バットの形状を変えることより、打席で打つべき球と、追い込まれるまで手を出してはいけない球の区別をつけられるようになることだと思います」と断言する。
「例えば、今季の田村は右投手に対し、初球からツーシーム、チェンジアップ、フォークのように、自分の体から遠ざかっていく変化球に手を出して凡打するケースが目立ちました。そうかと思うと、カウントを取りにきた甘いカーブ、スライダーを簡単に見逃すこともありました」と指摘。「田村のような左打者は基本的に若いカウントでは、自分の体から遠ざかっていく変化球には手を出さず、近づいてくる甘い球を逃さず打っていく心構えが大切だと思います」と説く。
「最近の若い選手はメジャーリーグを見るせいか長打力重視の傾向強い」
一方、左投手に対する時には「中堅から“逆方向”の左翼方向へ打ち返す意識」が大切だという。田村にとって格好の手本になりそうなのが、新井氏が広島コーチ時代に指導した丸だ。「私は当時、丸が左投手と対戦する時には『同じアウトになるなら、セカンドゴロではなくショートゴロでなれ』と言っていました。引っ張りにかかると、外角の変化球を引っ掛けてしまう確率が高くなるからです。田村にも、そういう練習をしてレギュラーを取ってほしいと思います」と指摘する。
「左投手に対しては、引っ張った方向に飛ばそうとしないこと。逆に右投手に対しては、引っ張れる球を待つこと」とまとめる新井氏。「最近の若い選手は、メジャーリーグを見る機会が多く、大谷翔平投手に憧れを抱くせいか、長打力を重視する傾向が強いと感じます。まずはアベレージ重視。長打を求めてバットの形状を変えたりするのは、レギュラーを固めてからでも遅くありません」と提言した。
178センチ、93キロの筋骨隆々とした体格で繰り出すフルスイングは迫力満点。21歳の田村の潜在能力が存分に開花しなければ、もったいなさ過ぎる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)