助っ人で失う若手の“居場所” 阪神OB危惧…セVに「野手の外国人選手は獲る必要ない」
NPB全体で主軸として活躍する外国人野手が減少「1年目からは可能性低い」
藤川球児新監督を迎えた阪神。外国人選手では、野手のシェルドン・ノイジー外野手とヨハン・ミエセス外野手を自由契約にした一方、ジェレミー・ビーズリー投手とハビー・ゲラ投手の残留は確定。19日にはフィリーズなどでプレーした右腕、ニック・ネルソン投手と来季の選手契約を発表。球団は新外国人3人を補強し計5人体制で臨む方針ともいわれているが、OBからは「野手の外国人選手は獲る必要がない」との声があがっている。
現役時代に阪神、ヤクルトなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「外国人野手を獲っても、『どこで使うの?』と思います。外国人選手といえば守備位置は外野かファースト、サードがほとんど。しかし、阪神は来季も一塁・大山(悠輔内野手)、三塁・佐藤輝明(内野手)で臨むでしょうし、中堅の近本(光司外野手)と右翼の森下(翔太外野手)は動かしようがない」と指摘する。
レフトのポジションだけは流動的だが、「せっかく今年ブレークした21歳の左打者・前川(右京外野手)と、23歳の右打者・井上(広大外野手)がいます。来てみて、使ってみなければならない外国人選手を補強するよりも、最初から若手を使った方が将来のためになると思います」と提言する。
前川は高卒3年目の今年、116試合に出場して打率.269(324打数87安打)、4本塁打42打点と躍進。井上は1軍では23試合、打率.212(52打数11安打)、3本塁打8打点も、ウエスタン・リーグで打率.308をマークし首位打者のタイトルを獲得した。
野口氏が日本人の若手選手優先を勧める背景には、NPBで近年、チームの主軸として活躍する外国人野手が減っている現実がある。それほど、日本の投手のレベルが上がっているのだろう。「ここ数年で文句の付けようのない活躍をしたといえるのは、DeNAの(タイラー・)オースティン(内野手)、ヤクルトの(ホセ・)オスナ(内野手)と(ドミンゴ・)サンタナ(外野手)くらいでしょう。オースティンにしても、本当の意味で実力を発揮できたのは、来日5年目の今年です。新助っ人が1年目から主軸で大活躍する可能性は、低い気がします」と見ている。
「代打要員なら獲ればいいし、ショートを守れるなら欲しい」
外国人野手の補強は結果的に、若手選手の出場機会を減らし、成長にふたをしてしまうケースがある。「若い選手は試合に出て成長していくものですから」と野口氏はうなずき、「代打要員なら、獲ればいいと思いますよ。それに、可能性は低いでしょうが、あえて言えばショートを守れる外国人選手なら欲しい」と付け加えた。
守備重視のショートに外国人選手を補強する例は少ないが、野口氏は「今年11月のWBSCプレミア12のオランダ代表で、かつてヤンキースのレギュラー遊撃手だったディディ・グレゴリウスが活躍しているのを見て、感動しました。今年はメキシコのチームに所属し、34歳になっていますが、彼のような選手が獲れるなら“胸熱”です」と語った。
野手では外国人の入る余地が極めて少ないと見られる一方で、「投手なら何人いても困ることはない」とも。「外国人野手抜きでも、十分優勝を狙えると思います」と断言する。果たして、新生藤川タイガースはどんな顔ぶれでV奪回を目指すことになるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)