“常に上”の天才打者「悔しかった」　高校時代から異次元…怪物だらけの名門

元DeNAの乙坂智は横浜高の同学年に近藤健介、2学年上に筒香嘉智がいた

　元DeNAで2024年シーズンはメキシカンリーグ「レオネス・デ・ユカタン」（米名称ユカタン・ライオンズ）でプレーした乙坂智外野手がFull-Countのインタビューに登場。横浜高時代を振り返り、同学年のソフトバンク・近藤健介外野手について当時から「本当にすごかった」などと振り返った。

　小学生時に神奈川県大会で見た福田永将（元中日）、高濱卓也（元阪神、ロッテ）のプレーに魅了され横浜高へ進学。3年には筒香嘉智がいた。「3年生ですごく大人にみえました。打撃練習でも場外ホームランばかりで。野球やってきたなかで打球は1番速かったです」。

　1年生ながら遊撃でレギュラーとなったのが近藤だった。プロ入り後も活躍し、2023年シーズンは本塁打と打点のタイトルを獲得。2024年はリーグ唯一の3割台となる打率.314で首位打者に輝くなど現在、もっとも3冠王に近い男は高校時代から格が違った。

「器用で肩が強い。打撃に関しては確実性、ミート力はすごかったです。打席内で頭が動かないから、ボールを長く見ることができて、自分の軸でスイングできる。当時からすごかったですが、プロに入ってもっとすごくなりましたよね」

　とはいえ、乙坂も1年秋にはポジションを掴む。注目の1年生コンビとなったが「記事や雑誌で取りあげてもらっても、いつも『近藤、乙坂』と書かれていました。常に近藤が上だったのは悔しかったですね」。ともに左打者。2か所での打撃練習では、乙坂は右側の打席に入り「いつも目の前にいる近藤の打撃を見ながら、意識してやっていましたね」と振り返る。一方で乙坂は、近藤が自身に対しては「まったく意識していなかったと思いますよ」と笑った。

近藤を見て「俺ももっともっとよくなりたい」

　注目される“ライバル”への嫉妬心はなかった。「本当にすごかった。追いついて、追い越したいとは思っていました。技術を盗んでやろうという感覚でしたね。いいものを吸収して、俺ももっともっとよくなりたいなと思って見ていました」と明かした。

　乙坂は高校時代から「プロに行きたい」と思っていたのに対し、近藤は「どうやったらプロで活躍できるかを意識して練習していたのをうっすら感じていた。そういう積み重ねがあって、プロの世界でも結果を残し、凄みが増していったんだと思います。相当、努力をしたんじゃないですかね」と“目線”が違っていたと振り返った。

　迎えた2011年のドラフト会議。乙坂は「まったく手応えはなくて、どこか育成でも声が掛かればいいな」と思っていた。先に名前が呼ばれたのは日本ハムから4位で指名の近藤だった。「近藤でも4位なんだと。もっと早く呼ばれるんじゃないかと思っていました」。すると乙坂も直後の5位で横浜から指名を受けた。

「『きたー！』みたいな（笑）。しかも地元で好きだったチームなので嬉しかったですね」。同学年のライバルの“背中”を見て成長し、念願だったプロ入りの切符を掴んだ。

（湯浅大 / Dai Yuasa）