レジェンドが中日での“しくじり”告白 埋まらなかった「溝」…新監督は「失敗すればいい」
オリックス・OB会長の山田久志氏、岸田監督は「選手の性格もわかっている」
阪急時代に下手投げでNPB通算284勝を挙げる活躍を見せた山田久志氏が、同じ投手出身の岸田護新監督に「チームを知っているから大丈夫。今の戦力なら十分、戦える」と太鼓判を押した。
中日の監督も務めた経験のあるオリックスのOB会長は、2024年12月に兵庫県芦屋市内のホテルで開かれた「第47回阪急・オリックスOB総会」に出席し、取材に応じた。山田氏は「岸田くんはずっとオリックスにいるから、選手の性格もわかっている。私の場合は(中日で)難しかったからね」と、球団生え抜きの指揮官誕生を喜んだ。
「どんどんチャレンジして、失敗すればいい。最初からうまくいかないよ。最近は新監督が意外といい成績を残すけど、うまくいく方が珍しいよね。中嶋(前監督)は独特の野球観で試合を進めてきたけれど、あの野球はなかなかできないと思うよ」と“失敗の勧め”を説いた。
山田氏は、監督が成功するポイントに「コミュニケーション」を1番に挙げた。「相手は俺のことをわかってくれるだろうと思ったら大間違い。なかなかわかってもらえないことが多い。選手からも『監督は俺のことをわかってくれているんだろうか』と。そう思った時、溝がちょっとずつ広がっていく。気が付いた時には、すでに遅いからね。それを縮める作業が大事なんだ」と続けたのは、自身の経験からだ。
「コーチに任さないといけないけれど、任せっきりもいけない。監督というのは大変だな」
山田氏は、能代高(秋田)、富士鉄釜石から1968年ドラフト1位で阪急に入団した。12年連続開幕投手を務め、8度のリーグ優勝、3度の日本シリーズ優勝に貢献した球界のレジェンド。現役引退後はオリックス、中日の投手コーチを務め、ヘッドコーチを経て中日の監督に就任した。1年目の2002年は前年の5位から3位に順位を上げたが、2年目のシーズン終盤に成績不振のため、解任された。
「3年くらい投手コーチを。ヘッドコーチも1年やったけど、野手はあんまりわからなかったね。私の場合(監督就任が)チームが変わるときだったから、余計にわからなかった。選手個々の考え方や性格なんかも、なかなか掴みきれないからね。コーチに任さないといけないけれど、任せっきりもいけないしね。監督というのは大変だな」
投手出身監督、外様の指揮官としての自身の経験をもとに、チームの舵取りの難しさを吐露したが、43歳の青年監督にはありがたい助言だ。さらに山田氏は、今季のチームについて「今の戦力なら正攻法でいいよ。バッテリーを中心に守備を鍛えていけば、十分戦える」と期待を込めた。
岸田監督は「思い切ってやってくれと、山田さんに言っていただけたのは心強く感じました。思い切ってやらせていただきます。無理矢理ではなく、いつも通りコミュニケーションは取っていきます。野手の気持ちって、やったことがないのでわからない部分もあります。わからないところはコーチと話し合いながら進めていきたいと思います」と感謝の言葉を述べた。さらに「1年後に優勝の報告ができたら最高ですね。チーム全員、一丸となって頑張れたらと思います」と力強く結んだ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)