勝負は「1球で決まる」 渡部遼人が大切にする“余裕”…失敗を重ねて到達した境地
オリックス・渡部遼人、積んだ経験から生まれた「心の余裕」
オリックスの渡部遼人外野手が「心の余裕」をテーマにプロ4年目での定位置奪取を目指す。「やっぱり1球、1球で決まるので、この世界。余裕があって立ち遅れたらダメですが、ある程度考えられる余裕が、3年かかりましたが見えてきたんです」。甘いマスクを引き締め、手応えを口にした。
渡部は桐光学園高、慶大から2021年ドラフト4位でオリックスに入団。2021年の大学選手権では「2番・中堅」で出場して打率.563をマーク。首位打者に輝き、チームの日本一に貢献した。また、東京六大学リーグで通算24盗塁を記録、成功率100%で「失敗しない男」の異名をとった。
「守備はそんなに心配していませんから、やることは明確です」という渡部が挙げたテーマは、打撃力アップと脚力を磨くこと。打撃は昨シーズン中にフォームを大幅に変更するなど、自分に合ったフォームを追い求めている。
プロ入り後、1年目の打率は.059、2年目も.171と低迷したが、2024年シーズンは広い守備力と俊足を評価され自己最多の65試合に出場。打率.182ながら、12安打で7打点とチャンスに強い。9月21日の日本ハム戦(京セラドーム)ではサヨナラ打を放ち、チームの連敗を8で止めるなど、得点圏打率は.417を誇った。
「もう、打つしかないという場面の方が、良い結果が出ています。シーズン後半には『思い切りいけ』とか『何とか当てろ』って言ってもらえていたので、逆に何も考えないから打点が付いてきたって感じですね」
先発で起用されることが多くなったことも好循環を生んだ。「先発なら試合に出る時間が長くなりますから、いろんなことを考えることができるようになりました」。盗塁では「勇気と心の余裕」を課題に掲げた。盗塁数は1年目の「1」、2年目の「2」から昨季は「4」に増えたが、盗塁死は「5」と失敗が上回った。
「盗塁で求められるのは勇気だと改めて感じました。変な余裕じゃなくて、積極的な勇気です。プレッシャーと戦う中で、何%か心に余裕があれば良い結果がでると感じました」。失敗から学んだことは多かった。昨季のチーム盗塁数はリーグワーストの61。機動力を生かして得点力を高めるためにも、経験を積んだ渡部の脚力は欠かせない。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(Full-Count編集部)