専門家が発見した広島のキーマン 新加入の“曲者”…示した武器は「対応が極めて難しい」
クイック気味のモーションからスローカーブ、ゆっくり足を上げてシュート…
広島は昨年、8月終了時点で首位に立っていたが、9~10月の大失速で結局Bクラスの4位に沈んだ。それまで快進撃を支えていた先発投手陣の疲労が、一気に噴出した格好だった。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、雪辱を期す広島の春季キャンプを視察。新戦力の中にユニークな“曲者”を発見した。
11日に宮崎・日南での1次キャンプを打ち上げ、13日から沖縄市で2次キャンプをスタートさせた広島。野口氏は日南で10日に行われた紅白戦を視察し、3回から2イニングを投げたアンダースローの鈴木健矢投手に注目した。
鈴木は昨年の現役ドラフトで日本ハムから移籍してきた。3回は2死から右前打を許すも、後続を断った。2イニング目の4回は3四球で2死満塁のピンチを招いたが、売り出し中の右の長距離砲・内田湘大内野手を見逃し三振に仕留め、2回無失点でしのぎ切った。
制球は思うようにいかなかったが、投球術に光るものがあった。野口氏は「気付いた人がどれだけいたか分かりませんが、足を上げ始めてからリリースまでの動作が全球違っていたのです。時間を計ったら、おそらく全て違っていたと思います」と指摘。「その中で、クイック気味のモーションからスローカーブを投げてきたり、逆にゆーっくり足を上げてから、右打者の内角にシュートを放り込んできたりしていた。あれをやられると、打者は対応が極めて難しくなります」と感嘆した。
起用法については「先発候補の1人だと思います。ただ、DeNAは昨年、同じアンダースローの中川颯をシーズン途中からリリーフに配置転換して成功しました。鈴木もああいう使い方が面白いと思います。たとえば先発投手が崩れて3回くらいでKOされた時、2番手で出てきて、相手の勢いを止めてくれる可能性がある。そういう術を持っています」。昨年のクライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズで活躍し、DeNAの日本一に貢献した中川颯になぞらえた。
ドラ1入団2年目常廣の飛躍、2位ルーキー左腕佐藤柳の活躍にも期待
鈴木は日本ハム3年目の2022年、新庄剛志監督の提案でサイドスローからアンダースローへ転向。翌年には6勝4敗、防御率2.63の好成績を残した。昨年のオフに行われた現役ドラフトは3回目にして初めて2巡目も実施され、鈴木は唯一の2巡目指名選手となったことで話題になった。野口氏は「現役ドラフトの対象となったことに、本人は複雑な思いがあるでしょうが、活躍してうっぷんを晴らしてほしいですね」と期待する。
広島の先発投手陣は、九里亜蓮投手がオリックスへFA移籍したが、大瀬良大地投手、床田寛樹投手、森下暢仁投手の3本柱は健在。また、ドラフト1位入団で期待されながら、1年目の昨年は春先にコンディション不良で出遅れ、2試合登板(1勝0敗)に終わった常廣羽也斗投手も、今年はフル回転が見込まれている。
「今年は常廣をたくさん使うと思います。それに、藤井(彰人)ヘッドコーチが『どうやら使えそうなんですよ』と教えてくれた。ドラフト2位ルーキーの佐藤(柳之介投手)にも注目します」と野口氏。佐藤柳は最速148キロのストレートに多彩な変化球を交える、実戦向きの左腕だ。
移籍の鈴木が奮闘し、常廣と佐藤柳がフレッシュな新風を吹き込めば、新井貴浩監督就任3年目でチーム7年ぶりの優勝を狙う広島が、いよいよ活気づきそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)