枠パンパンで争う「2/11」 育成ドラ1の胸中「埋めないでほしかった」…誓うライバル圧倒

広島育成右腕・杉田が痛感したプロの壁「支配下は勝ち取れない」
大舞台でも物怖じしない“強心臓”が持ち味だったが、プロの高い壁を痛感した1年だった。2023年育成ドラフト1位で広島に入団した杉田健投手は「試合で投げる度に面白みのない投手に衰退していった気がします」と1年目の苦悩を振り返る。
昨季の春季キャンプでは育成ルーキーとは思えない存在感を発揮した。150キロ近い力強い速球を武器に、オープン戦で結果を残し、開幕以降は2軍で先発を任される試合も増えた。「順調だっただけに怖いもの知らずでやっていました」と、プロ独特の空気感に左右されず腕を振る右腕への評価は高まっていった。
しかし、登板を重ねる度に違和感を覚えることが増えた。「球速がガクンと落ちたんです。体に問題はなかったのですが、持ち味の真っすぐのキレがどんどん悪くなっていきました」。2月中旬の練習試合で148キロを計測した真っすぐは5キロ近く遅くなり、痛打される場面が目立った。
大学では右肘を故障していた影響で3年間登板がなく、デビューは4年になってから。4年春のリーグ戦で初登板を果たすと、秋のリーグ戦では最優秀投手賞と最優秀防御率の2冠を獲得したが1年を通して野球をするのは高校以来。「見えない疲れがあったと思いますし、真っすぐが良くないと支配下は勝ち取れないと痛感しました」と振り返る。
気がかりだった支配下枠「埋めないでほしかった」
1年目の悔しさを糧に、オフは持ち味である“強い真っすぐ”を取り戻すことをテーマに取り組んできた。「今は見違えるような球がいっています。球速も150キロ近くまで上がってきましたし、手応えを感じています」と順調なキャンプを送っている。
オリックスにFA移籍した九里亜蓮投手の補償が、人的ではなく金銭だったことも杉田の気持ちに拍車をかけた。広島の支配下枠は68とパンパンの状態だっただけに「正直、もう枠を埋めないでほしいと思っていました」と正直な心境を明かした。結果的に、気がかりだった支配下枠は変わらず。残り2枠をかけて育成11選手で争うことになる。
「圧倒してしまえばいいと思っています。周囲を納得させる投球をするだけです」と自信をのぞかせる。首脳陣も杉田の成長を認めており、2軍の今季初実戦となった15日の社会人・王子との練習試合では先発を任されるなど期待は大きい。
グラブにも杉田の強い決意が見てとれる。乃木坂46・岩本蓮加さんの初センター曲を刺繍したグラブを使っていたが、昨年のシーズン途中、愛用してきた道具を封印。「もう卒業しました。今は野球一筋です」と意気込む。「圧倒します」。強い口調で何度も繰り返した右腕が、残り2枠を貪欲に奪いにいく。
(真田一平 / Ippei Sanada)
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