中日・中田翔の胸中「このまま終われない」 後輩も引退、世代交代実感も…大減量で挑む覚悟

中日1年目の昨季は腰痛などで62試合の出場に終わり「本当に不甲斐ない」
誰もいない室内練習場に、乾いた打球音が響く。ブカブカのユニホームに、シャープになった頬のライン。明らかに変わった姿で、プロ18年目を迎えた中日の中田翔内野手が黙々とバットを振り込んでいた。移籍1年目は度重なる故障に泣き「本当に不甲斐ない1年になってしまった。チームにもファンにも申し訳ない」と謝罪。押し寄せる世代交代の波、自身が考える引き際……今の思いを激白した。
「“世代交代”って言葉があるやろ。感じるね、やっぱり」。若手時代から自由奔放な発言でビッグマウスとされた男がポツリとつぶやいた言葉に、重みがあった。かつて自身がそうだったように、勢いのある若手がポジションを奪っていく世界。35歳となった今、そんな後輩たちが眩しく映る。しかし諦めたわけではない。「このままじゃ終われない。後がないという気持ちで入らないといけない」と目をギラつかせた。
昨季は62試合で打率.217、4本塁打、21打点。腰や太腿裏の故障で3度の登録抹消を経験した。毎朝、不安を持ちながら体を起こして状態を確認し、スイングをするにもランニングをするにも怖さがあった。守備では膝を付くことを恐れる自分がいた。初めての経験に「本当によくなるのかな。技術うんぬんじゃなく、体がきつくて辞めていく人ってこういう感じなんかな」と後ろ向きな気持ちになることもあった。
体への負担軽減のため、昨季終了後に116キロあった体重をオフに入りわずか1か月で17キロ落として99キロとした。現在も100キロ前後をキープしている。大減量のようだが、日本ハム時代は100キロ前後でプレーしていたため「その感覚に戻しただけだからめちゃくちゃ絞った感覚はない」とズレはない。「体は楽になったかな。いい風に転がればいいけど……そう信じてやるしかないから」と吐露した。
プロ18年目の35歳「違った中田翔を見せられたらいいと思うね」
「俺の周りがどんどん引退していっているからな。年下も結構辞めていった。30歳過ぎたらそうなるんやな」。人生の半分をプロ野球選手として過ごす。厳しい世界で、志半ばでユニホームを脱ぐ人たちを数え切れないほど見送ってきた。いつかくるその日が自分にも迫ってきている感情を、隠すことなく打ち明ける。
「自分の中でまだできるっていう感覚があればいつまでも続けていたいけど、でも今年、自分の中で何かひとつでも納得いくようなものがなければ、ちょっとその先の人生のことを考えないといけない。野球が好きだから、40歳を過ぎてもできるに越したことはないけどね。自分の思ったようにやっていく中で、押しつぶされたら終わり。切られていくのが当たり前の世界で、最後の最後、どこまでしがみつけるか。今年はすごく大事な1年になるんじゃないかな」
4番へのこだわりは、2021年の巨人移籍後に捨てた。今はシーズンをコンスタントにスタメン出場することを目指し「出たときに打つだけじゃなくて守備も、全てにおいてその日一番のパフォーマンスをできる準備をするだけ。違った中田翔を見せられたらいいと思うね」。昨年は準備をする段階にも立てない時期が長かっただけに、目標を語る表情は明るい。
最後に再び、ポツリとつぶやいた。「年俸もたくさんもらっていて、こう見えて結構プレッシャーかかってんねん」。豪快なように見えて繊細。自ら「すごく大事な1年」と位置づけたシーズンの先に待つ未来は、どんな景色になっているのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)