あと1人で逃した“偉業” 異例のリプレー検証も…指揮官アッサリ「よしとしましょう」 

西武・西口文也監督【写真:小林靖】
西武・西口文也監督【写真:小林靖】

9回パーフェクトに抑えるも援護なく、10回に初安打を許したことも

 とことんノーヒットノーランには縁がないようだ。就任1年目の西口文也監督率いる西武は11日、本拠地ベルーナドームで行われた阪神とのオープン戦に1-0で勝利。9回2死まで阪神打線を無安打に抑えていたが、前川右京外野手に内野安打を許し、5投手継投でのノーヒットノーランを逃した。西口監督は通算182勝を挙げた現役時代、ノーヒットノーランを達成寸前で逃したことが3度もあった。

 この日は先発の菅井信也投手が5回を無安打2四球に抑えると、2番手の平良海馬投手、3番手の佐藤隼輔投手、4番手のエマニュエル・ラミレス投手も1イニングずつ、いずれも3者凡退で片づけた。9回にマウンドに上がった新外国人トレイ・ウィンゲンター投手も先頭から2者連続三振に仕留め、オープン戦とはいえ記録達成へ、あと1死に迫った。

 ところが、途中出場していた前川が放った打球は二遊間へ。遊撃の滝澤夏央内野手が回り込み好捕するも、送球がワンバウンドとなる。一塁に入っていた平沼翔太外野手が体を目いっぱいに伸ばして送球をミットに収め、アウトにも見えたが、塁審は平沼の足が一塁ベースから離れたとみて「セーフ」と判定した。平沼が「確かに足は離れましたが、捕球した瞬間はベースについていたと思いました」と首を捻るほど、微妙なタイミングだった。

 諦めきれなかったのは西口監督だ。オープン戦では珍しいリプレー検証を求めて食い下がったが、判定が覆ることはなかった。就任後初のリクエストは、実に印象的な形になった。

 西口監督は西武投手時代の2002年8月26日、本拠地・西武ドーム(現ベルーナドーム)で行われたロッテ戦で、9回2死まで無安打1四球の快投を演じていたが、中前打されて大記録達成を逃した。2005年5月13日、本拠地インボイスSEIBUドーム(同)で行われた巨人戦でも、9回2死まで無安打1死球に抑えながら、清水隆行外野手に右翼席へソロアーチを浴びた。

 同年8月27日、本拠地で行われた楽天戦に至っては、9回終了時点で相手をパーフェクトに抑えていたが、味方打線の援護がなく、0-0のまま延長戦に突入。10回先頭打者に右前打を許した。

「私の場合は途中から打たれてもいいと思って投げていた」

「自分の現役時代と重ね合わせたりはしませんでしたよ。私の場合は、途中から打たれてもいいと思って投げていたので」と言いつつ、「自分が9回2死から2回打たれているので、打たれるとすれば、そこしかないと思っていました」とジョークで紛らせるしかない西口監督だった。

 結局、ウィンゲンターは次打者を見逃し三振に仕留めゲームセット。継投で零封勝ちを収めた。西口監督は「試合内容はよかったので、よしとしましょう」と笑顔でうなずいた。

 もっとも、こうなったら、今季早い時期に西口監督の下で西武の投手のノーヒットノーランを見たいところである。西口監督自身「そりゃね、私はベンチで楽に座って見ていられるので、そういうピッチングをしてくれればいいですね」と異存はない。“悲願”の記録達成が、昨季最下位からの躍進につながれば何よりだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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