オリのドラ6・片山楽生が感謝する「野球の世界での父」 苦悩を解き放ってくれた出来事

オリックス・片山楽生【写真:小林靖】
オリックス・片山楽生【写真:小林靖】

オリの片山楽生(らいく)が感謝するNTT東人本の安田武一コーチ

 楽に生きてきたばかりじゃなかった野球人生。オリックスのドラフト6位ルーキー、片山楽生(らいく)投手(白樺学園、NTT東日本)は、飛躍の転機を作ってくれた投手コーチに感謝の思いを持ち続けている。

「もう、恩人です。野球の世界での“父”ですね。自分を知ることも、自分を律することもできました」。片山が、NTT東日本時代にお世話になった安田武一投手コーチへ感謝の思いを口にした。

 片山は、北海道帯広市に隣接する音更町出身。白樺学園高、NTT東日本から2024年ドラフト6位で入団した。名前の「楽生」には、楽しく生きてほしいという両親の思いが込められた。白樺学園高では2年秋の明治神宮大会で4強入り。NTT東日本初の高校出身者として入社し、1年目から「都市対抗」「日本選手権」の2大大会に出場した。2年目は都市対抗4強、日本選手権準優勝に貢献した。

 楽しく生きることができたのは、ここまでだった。「1年目にすごくいい結果を残せたのですが、振り返ってみればそこがピークだったんです。頭で考えすぎて、負のループが循環してしまったんです」と片山。1年目は怖いもの知らずで、打者に向かっていた。「社会人で実績のある人と対戦しても、僕からすれば誰? っていう感じでした。東京六大学や東都とか、エリートばかりの中で田舎の高校出身の僕が打たれても当たり前でしょ、というマインドでいけてたんです」

 しかし、華々しいデビューができたばかりに、2年目からは自分でハードルを高く設定してしまった。「求められることも大きくなって、考えることも増えました。自分でも結果だけではなく、このバッターからはこういう打ち取り方をしなければいけない、と自分を苦しめてしまいました。結果は残せず、思ったように体が使えなくなってしまいました」と当時を振り返る。プロからの指名も当然、かからなかった。

「野球を深く学べた」…誓う恩返し

 苦しい日々が続く中、4年目を前に安田コーチが「投手キャプテンをやってくれないか」と声をかけてくれた。「自分自身の成長につながる」と即決したことが「自分の殻を破ることにつながったんです」という。

「チームに対してどういう背中でいるべきか、どんな発言をしなきゃいけないか、どういう姿勢で練習に臨まなければならいのかを考えたことで、自分を律することや自分を知ることができたんです。2年目、3年目は全部自分に矢印が向いて考えていたのですが、矢印を外に向けることができるようになったんです」

 4年目の春先に左脇腹を痛めたことも、転機につながった。約2か月、離脱した間に体の使い方を一から見直すことができ、悪い癖も少し取れた頃、安田コーチから提案のあったショートアームを取り入れたことで「夏の都市対抗の前からすごく状態が良くなった」という。投手キャプテンとしての取り組みやマインドが変わったことで、再び楽に生きることができるようになった。

 今年1月の入寮時には、チームメートが寄せ書きしてくれた背番号「54」「YASUDA」のユニホームを持参した。安田コーチからは「好きな野球に感謝して 楽しく マウンドで躍動を‼」「この道より我を生かす道はなし この道を歩く」の励ましの言葉をもらった。

「勝つことだけじゃなく、野球を深く学べたと思っています」。1軍で活躍し、野球での恩返しを誓う。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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