130キロ台でも打てない直球 育成から羽ばたく左腕…指揮官が惚れ込む21歳の才能

西武4年目・菅井、今季初登板で6回2安打無失点…初勝利ゲット
■西武 2ー0 ロッテ(9日・県営大宮)
西武・菅井信也投手は9日、県営大宮で行われたロッテ戦に今季初登板初先発。6回2安打無失点の快投で今季初勝利を挙げ、今季から指揮を執る西口文也監督にホーム初勝利をプレゼントした。新監督は「(本拠地の)ベルーナ(ドーム)じゃなかったけど、嬉しいですよ」と感慨深げ。昨年まで2軍監督として指導してきた“秘蔵っ子”が示した成長に「これからどれだけやってくれるか楽しみ」と目を細めた。
「変化球が(ストライク)ゾーンに決まって、いいところで真っすぐで空振りが取れたので良かったです。まず初登板で初勝利することができたので次も無失点で抑えることをイメージしてやります。初登板で勝ったのは本当に嬉しいですけど、まだまだこれから試合があるので、しっかり調整していきたいです」
先発が予定されていた1、2日の楽天戦(楽天モバイル)が雨天中止。チームの今季9試合目で巡ってきた初登板初先発で21歳左腕が躍動した。直球の最速は141キロ止まり。全86球中、直球は54球で140キロ超えは1球だけだったが、求めるのは球速ではない。「(球速は)もう少し上げたいなと思います。ただ指にかかるような真っすぐを投げる意識でやってきたし、指にかかれば空振りも取れるしフライアウトも増えると思います」。
菅井の直球の回転数はプロ野球の平均と言われる約2300回転を上回る約2500回転。球速以上に打者には速く見え、手元で伸びているように感じる。だから捉えたつもりが球の下を叩いてフライアウトが増える。それはこの試合のアウト18個中、飛球11、三振6、ゴロ1という数字が如実に物語っている。西口監督も「真っすぐの伸びだったり、うまく緩急を使ってタイミングをずらしている」と評価する。
4回無死一塁では3番・ソト、4番・ポランコを130キロ台前半の直球で連続空振り三振。6回1死一、二塁のピンチでもポランコを再び134キロの直球で空振り三振に仕留めた。6回は連続四球と崩れかかったが、西口監督は「5回までの投球をしてくれれば大丈夫だと思っていた。(ピンチでも)大丈夫だろうと普通にどっしり構えて見ていました」と信頼していたことを強調。菅井も「空振りを狙っていって、思った通りにいって良かったです」と胸を張った。
2021年育成ドラフト3位で入団…今季1軍では14回連続無失点
2021年の育成ドラフト3位で入団して4年目。昨年6月に支配下登録され、7月15日のオリックス戦(ベルーナドーム)でプロ初勝利も挙げたが、プロ通算8試合で1勝2敗、防御率5.25がこれまでの1軍実績だ。それが今年はオープン戦2試合でも計8回を無失点。1軍での実戦に限れば14回連続無失点と急成長を示している。
右足をゆっくりと上げ、溜めを作って二段モーションのようなフォームでタイミングを外す。走者が出ればクイックも駆使する。直球だけでなく「今日はチェンジアップが良かったです」と変化球も精度を増していいる。
同期入団で同い年の156キロ左腕・羽田慎之介投手、黒田将矢投手が開幕から登板を重ねる中、3人の中でただ1人育成選手だった菅井が真っ先に挙げた今季初勝利。同期の背中を追いかけ、追いつき、追い越した男は「いい関係で今できています。3人一緒に(同じ試合で)投げて勝つ日が来ればいいなと思います」と新たな目標を掲げた。